小さすぎて検知できない火山のマグマポケット、噴火の恐れも

世界各地にあるかもしれない「小さな時限爆弾」、火山学者が警鐘

2021.05.22
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噴火するクラプラ火山。2009年にこの火山から偶然採取されたマグマの成分は、1724年の噴火の際のマグマと一致していた。検出装置がこれだけ進歩しているにもかかわらず、そのマグマポケットの存在は300年間も気づかれずにいたわけだ。(PHOTOGRAPH BY ARCTIC IMAGES, ALAMY STOCK PHOTO)
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 2009年の爽やかな春の日、アイスランドのクラプラ火山の掘削に取りかかった技師たちに、予想外のことが起きた。地熱エネルギーを利用するため、地下4キロメートルのところにあるマグマだまりの境界あたりまで掘削しようとしたところ、ドリルが1.6キロメートルほど掘り進んだときにマグマが這い上がってきた。それまで知られていなかった地下のマグマポケットを偶然掘り当ててしまったのだ。

 近年、米ハワイのキラウエア火山やケニアのメネンガイ火山の掘削プロジェクトでも、予想外のマグマポケットが発見されている。4月15日付けで地質学の専門誌「Geology」に論文を発表した研究者たちは、世界中の活火山の中心部付近にあるこうした「隠れたマグマポケット」に、噴火のリスクがあると主張している。マグマポケットの大きさは1立方キロメートル未満と小さいため、通常、科学者がマグマだまりの位置を特定する技術では検出できない。

 英ランカスター大学の火山学者ヒュー・タフェン氏によると、クラプラ火山は「地球上で最もよく研究されている火山の1つ」だ。この火山はさまざまな方法で繰り返し調査されており、地下の様子はほぼ把握できていると考えられていた。「ですから、このマグマポケットが隠れていたのは驚くべきことなのです」。なお、タフェン氏は今回の研究には参加していない。

 今回の研究では、隠れたマグマポケットが、非常に長い間、沈黙を保っている場合があることも明らかになった。化学分析の結果、今回掘削されたマグマは、1724年のクラプラ火山の噴火で噴出した溶岩と同じであることがわかった。これだけ地球物理学が進歩したにもかかわらず、このマグマポケットは300年もの間、誰にも知られずにいたことになる。

 マグマポケットは、下から高温のマグマや火山ガスが侵入してくると、再び目を覚ます可能性がある。これにより、粘りけがあり、ガスを閉じ込めやすいマグマが溜まっているクラプラ火山のようなマグマポケットは、より爆発的な噴火を引き起こす可能性がある。

 今回の研究は「ちょっとした警鐘」を鳴らすことを目的としていると、ニュージーランドの研究機関GNSサイエンスの博士研究員で、今回の論文の筆頭著者であるシェーン・ローヤッカーズ氏はいう。隠れたマグマポケットは火山の危険性に予期せぬ影響を及ぼすので、見つけておく必要があるのだ。

「噴火の可能性のある小さなマグマポケットがめずらしいものではなかった場合、あちこちの火山のすぐ下に小さな時限爆弾が仕掛けられていることになります」と、英ロンドン大学ユニバーシティーカレッジの火山学者であるエマ・リュー氏は言う。なお、氏は今回の研究には関与していない。

次ページ:小さなマグマポケットが見つけにくい理由

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