「花を咲かせたことは、種の回復にとって、幸先の良いスタートです」と語るのは、植物園自然保護国際機構で絶滅の危機にひんする樹木を研究するエミリー・ビーチ氏だ。ビーチ氏はミズーリ植物園の木の繁殖には関与していないが、2016年にジェルー氏、タンザニア森林局の職員とカロミア・ギガスを探すための調査を行っている。
「私たちが森を訪れたとき、苗木は見あたりませんでした。しかし、花を咲かせるようになったという事実は、この種の未来にとって大きな希望です」
タンザニアの保護区の現状
カロミア・ギガスが1993年にタンザニアで再発見されて以降、ジェルー氏とタンザニアの植物学者たちは野生の木を少しずつ見つけてきた。タンザニア森林局の種子生物学責任者ファンデイ・マシンバ氏によれば、現在、野生に存在するおそらく20本余りのカロミア・ギガスはすべて、ミトゥンドゥンベア森林保護区とリティポ森林保護区にある。
これらの森林保護区の森は、アフリカ中部から南部にかけて広がるいわゆる「ミオンボ林」だ。ミオンボ林は森林生態系の一種で、ヒヒ、イノシシ、スイギュウ、ディクディクと呼ばれる小型のアンテロープをよく見かけるとマシンバ氏は話している。
その土壌はかつて海底だったため、独特な環境を持つ。「基本的に、土壌はシロアリの排せつ物とサンゴの残骸です」とリー氏は説明する。
カロミア・ギガスの木は自生地とセントルイスで研究されてきたが、花はこれまで謎のままだった。
ジェルー氏は野生の木について、「森林保護に関心を持つ近くの村人が見守ってくれています」と話す。「花が咲きそうだと思ったら、彼が私たちに知らせてくれます」
そのたびに誰かが車を走らせ、はるばる森林保護区に出向いているが、花は一度も確認されていない。
「カロミア・ギガスは政府が保護する森にありますが、人々が伐採のために立ち入ります」とマシンバ氏は話す。カロミア・ギガスの木は非常に需要の高いチーク材に比べられ、貴重な木材資源となっている。
「(カロミア・ギガスの種の)存続に関しては、この木があるから大丈夫です」とワイアット氏は断言する。「絶滅は避けられると確信しています。種を保存することも100%可能です。タンザニアで保護されており、私たちの植物園にもコレクションがあります。十分な数のタネが手に入れば、万一のために(冷凍)保存したいと考えています」
大陸間を移送できるほど強い木ではないという懸念から、ジェルー氏は植物園で育てたカロミア・ギガスを自生地に戻したいとは考えていない。ただし、タンザニア政府や、カロミア・ギガスの研究を行う同国ダルエスサラーム大学の植物学者と積極的に知識を共有していくと述べている。
現在のところ、1輪の小さな花が未来への明るい兆しだ。植物園のスタッフも驚いたことに、この花は24時間もたたないうちに木から落ちてしまった。
「簡単に言えば、しおれてしまいました」とワイアット氏は話す。「私がそれを床から拾って堆肥にしました」
まるで湖の底から生えてきたようなヤナギの木。マウント・アスパイアリング国立公園の端に位置するワナカ湖を訪れた人は、必ずこの孤独な木に目を奪われる。(PHOTOGRAPH BY MARTIN VALIGURSKY, ALAMY)