野生で約20本の絶滅危惧の木に花、世界初確認、絶滅回避へ

米ミズーリ植物園で保護育成中、アフリカ原産のシソ科カロミア・ギガス

2021.05.22
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遠く離れた米国での栽培

 この木を育てることは容易ではない。野生の木は昆虫によってもたらされる菌類にとても弱い。

 2018年9月、タンザニアの現地調査で採取された数千のタネがセントルイスに輸送されたが、栽培可能なものは100ほどしかなかった。しかも、原産地である東アフリカの土壌、水分量、日照を植物園の温室で再現する必要があった。

 感染症を防ぐため、まず濡れたペーパータオルの上で発芽させ、それから泥炭に植えることでなんとか栽培に成功した。現在、タネから育てた若木30本と挿し木によって増やした1本が栽培されている。

「私たちが引退する前に花を咲かせるかどうか議論していました」とワイアット氏は話す。野生にほとんど残されていないこの種を守ろうと努力し、成長する姿を見られたのは感動的なことだ。

「節目ごとに祝っています。自分の子どものようなものです。この種の世話係になった気分です」とワイアット氏は語る。「この種とは科学的なつながりだけでなく情緒的なつながりを感じています」

 リー氏も同じ気持ちだ。「彼らは私の赤ん坊のようなものです」

カロミア・ギガスの葉のクローズアップ。野生の木は乾期にすべての葉を落とすことが確認されている。(PHOTOGRAPH BY CASSIDY MOODY, MISSOURI BOTANICAL GARDEN)
カロミア・ギガスの葉のクローズアップ。野生の木は乾期にすべての葉を落とすことが確認されている。(PHOTOGRAPH BY CASSIDY MOODY, MISSOURI BOTANICAL GARDEN)
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 ミズーリ植物園の若木が咲かせた小さな花は、科学者たちがこの木に対する理解を深める助けになっている。まず、カロミア属で間違いないこと、さらに、花びらと雄しべの形から、昆虫が花粉を運ぶ可能性が高いことが確認された。裏返っているように見える花の構造が、種全体に共通するものなのか、それとも、まだ若いこの木の遺伝的欠陥なのかは不明だ。

「この花は……通常の配置ではないのかもしれません」とジェルー氏は話す。「何しろ初めて花を咲かせた若木ですから」

 この花はさらに、種の存続を確実にする助けにもなる。挿し木で個体数を増やすことは可能だが、そうして生み出された木は同じDNAを持つクローンだ。種に遺伝的な多様性があれば、害虫などの致命的な状況により耐えやすい。

「私たちのコレクションが花を咲かせなければ、野生の植物のタネに頼るしかなく、生存率が非常に低くなります」とワイアット氏は話す。自家受粉が可能な植物もあるが、カロミア・ギガスが該当するかどうかはまだわからない。花がしおれる前に、リー氏が人工授粉を行ったが、もっと多くの木が花を咲かせれば、遺伝的に強い植物になると述べている。

「その日の終わりに花粉を散布しました。植物の自家受粉のしやすさについてはよくわかっていません。同じ植物でも変動する場合があります。いずれにせよ、今回は成功しませんでした」とリー氏は説明する。「(若木の)数が多いため、次々と花が咲いて他家受粉できるのが理想です。その方が遺伝的な多様性を高められますから」

ギャラリー:死にゆく世界の巨木、瀬戸際の森林(写真クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:死にゆく世界の巨木、瀬戸際の森林(写真クリックでギャラリーページへ)
米国カリフォルニア州のフンボルトレッドウッズ州立公園内で、最も広いセコイアの古木の森。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS,NATIONAL GEOGRAPHIC)

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