野生で約20本の絶滅危惧の木に花、世界初確認、絶滅回避へ

米ミズーリ植物園で保護育成中、アフリカ原産のシソ科カロミア・ギガス

2021.05.22
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誰も見たことがなかったというカロミア・ギガスの紫色の花。米ミズーリ植物園の園芸家たちはこれからの数週間でさらに花が咲くと予想しており、希少な木にとって希望の光となっている。(PHOTOGRAPH BY CASSIDY MOODY, MISSOURI BOTANICAL GARDEN)
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 米ミズーリ州セントルイスにあるミズーリ植物園の温室で、紫と白の小さな花が咲いた。世界で最も絶滅が危惧されている樹木の一つ、カロミア・ギガス(Karomia gigas)の花だ。

 彼らのような専門家も、この花を見たことはなかった。「私たちが知る限り、科学文献にこの花の記録はありません」と、ミズーリ植物園でタンザニアプログラムの責任者を務めるロイ・ジェルー氏は話す。花を見つけたのは5月3日。上級園芸家ジャスティン・リー氏が温室で若木をチェックしていたときだった。

 カロミア・ギガスはミントと同じシソ科の一種で、1977年にケニアで初めて発見されたが、知られていたわずか2本の木が伐採され、絶滅したと考えられていた。ところが、1993年にタンザニアで再発見され、現在は野生ではタンザニアで20本余りが確認されているだけだ。

 あまりに珍しい木のため、英語やスワヒリ語はもちろん、この木が自生する森林保護区の現地語でさえ名前が存在しない。世界には知られているだけで6万種以上の樹木が現存するが、カロミア・ギガスは最も絶滅に近いと同時に、アフリカで最も危機にさらされている種の一つだ。

 ジェルー氏にとって、この花がこれまで目撃されていなかったことにそれほど驚きはない。カロミア・ギガスは25メートル近く真っすぐ伸びる高木で、地面から10〜12メートルほどまでは枝がないため、花を見つけるのは難しい。

ミズーリ植物園で栽培されているカロミア・ギガス。樹齢3年で高さ2メートル近くまで成長している。(PHOTOGRAPH BY CASSIDY MOODY, MISSOURI BOTANICAL GARDEN)
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 花は2.5センチほどで、薄紫の花びらが下を向き、花粉を付けた4本の白い雄しべが中央から突き出ている。

「ミントの花としては少し変わっていて、裏返っているように見えます」とリー氏は説明する。一般的に、シソ科の植物は筒状の花を咲かせる。カロミア・ギガスを管理する専門家は、この花がハチ、チョウ、ガなど、花粉を媒介する送粉者を引き付けると考えているが、自らの花粉でも受粉(自家受粉)する可能性もある。

 温室ではこれからの数週間で、さらに多くの花が咲く見込みだ。ただし、引き付けられるのは昆虫ではなく、この種を絶滅から守ろうと取り組む人の手になる。複数の花が咲いて、他の花の花粉で他家受粉を行えば、絶滅を免れる可能性が高まる。

 そして、希少な木が花を咲かせた今、この木の保護に取り組む人々は絶滅から守ることができると確信している。

「実際に絶滅するかどうかという観点から見ると、非常に良い兆候です」と、ミズーリ植物園の園芸担当副園長アンドリュー・ワイアット氏は話す。「絶滅は避けられるでしょう」

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