ハワイ王国最後の「悲劇の女王」、リリウオカラニの物語

先住民のために立ち上がるも、白人に退位させられ王国に終止符

2021.06.11
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 クリーブランドはクーデターを「重大な恥辱」と呼び、スティーブンスを罷免して新たな公使に女王の復位を命じた。米国の後ろ盾を得たと考えたリリウオカラニは、クーデターの参加者は王国の法に照らして処罰されるべきだと主張した。

 ところが、ドールは屈することなく、臨時政府は合法的であり、武力によってのみ排除できると反発した。米国もそれ以上の干渉を行わなかったため、リリウオカラニは王位を維持しつつも、ドールを止めることはできなかった。

 1893年12月、米国議会はクーデターの独自調査に乗り出す。ブラントの報告書に対する議会側の回答としてまとめられたモーガン・レポートは、臆面なく併合支持の立場をとっており、歴史家のラルフ・カイケンダールによれば「女王以外のあらゆる人の容疑を晴らす」内容だった。議会がそれ以上行動を起こすことはなかったが、ドールの臨時政府は急ピッチで政権の基盤を固め、1894年7月にはドールを大統領とするハワイ共和国が誕生する。

 半年後の1895年1月、王制派のハワイ人ロバート・ウィルコックスが反乱を起こした。少なくとも1000人のハワイ先住民が集まるとの想定に反し、実際に集まったのは100人程度で、3回ほど短い戦闘が行われただけで警察に降伏した。

 その結果、反乱に加わった191人に加え、自邸から武器が見つかったとしてリリウオカラニも逮捕された。リリウオカラニは、死刑宣告を受けた6名の支持者の解放と引き換えに、正式に退位した。彼女は5年の重労働刑と罰金を言い渡されたものの、その刑の代わりに自宅軟禁が続き、1896年にドールから恩赦を受けた。

米国に併合され準州に

 クリーブランド政権は、ハワイへの武力介入には否定的だった。1898年に米国とスペインの間で米西戦争が勃発すると、新大統領のウィリアム・マッキンリーは、遠洋での補給能力を増強して米国海軍の戦略的優位性を高めるため、選挙公約でもあったハワイ併合を実行した。上下院にも共同決議を呼びかけ、1898年8月、ハワイは米国の準州となる。ハワイはその後61年にわたって準州であり続けたが、1959年に米国50番目の州となった。(参考記事:「ハワイ固有のカタツムリが絶滅、最後の1匹が死亡」

1887年5月4日、リリウオカラニはホワイトハウスを訪問した前の王カラカウアの妻カピオラニに同行した。このイラストは、その時のものだ。のちにリリウオカラニは米国政府に復位の仲介を求めたが、その試みは失敗に終わった。(ILLUSTRATION BY J. H. MOSER, CORBIS/GETTY IMAGES)
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 王位を失った女王はどうなったのだろうか。リリウオカラニは、その後何年にもわたり、一族の土地を取り戻して米国政府から補償を受けるための闘いを続けた。退位から20年近くが経った1911年には、ハワイ準州から終身年金が与えられることになった。

 1993年、米国議会は、ハワイ先住民が主権を「直接的に放棄したことはない」旨を認める共同決議を採択した。ただし、これによって米国の政策が変わることはなく、彼らは今も政治的主権のない先住民グループの一つでしかない。

 現在では、ハワイの島民のうち、先住民の子孫は10%ほどしかいない。白人と比べると、低い教育水準、高い失業率、貧困、結核の罹患率や喫煙率、肥満率の高さなど、健康面や社会面での格差は大きい。

 しかし、先住民の人々の、自らの文化に対する誇りは失われていない。1970年代には、ハワイの先住民たちが、言語や慣習を保存するための活動を再開した。これが主権運動につながり、現在も政府による承認を求めている。カウアイ島で教師をしているケアリイ・ホールデンさんは、2014年の公聴会で「私たちは独立した主権国家なのです。その真実に気づきつつある人が増えています」と述べている。

特集ギャラリー:ハワイ 波と生きる 写真10点(写真クリックでギャラリーページへ)
夜明けと同時にマカハの海に出てきた姉妹といとこが、大会前に軽く体を慣らす。ハワイの王族たちが興じた伝統のスポーツに幼い頃から親しむことで、自分たちの文化に誇りを感じるようになる。(Photograph by Paul Nicklen)

文=ERIN BLAKEMORE/訳=鈴木和博

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