免疫を刺激して「広域中和抗体」を産生させるワクチン候補のタンパク質「eOD-GT8」のCG。(IMAGE COURTESY OF JOSEPH JARDINE, SERGEY MENIS, AND WILLIAM SCHIEF OF SCRIPPS RESEARCH AND IAVI.)
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 ウイルス学者のジョゼ・エスパーザ氏が、1980年代、世界保健機関(WHO)でエイズ(後天性免疫不全症候群)との闘いに着手したとき、氏も多くの同僚たちも、ワクチンこそが解決策であり、そう遠くない未来に開発できると確信していた。

 彼らが楽観的だったのは、確かな科学的根拠があったからだ。エイズを引き起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して、人間が抗体を作ることはわかっていた。そして、体に抗体を作らせるワクチンの開発は一般的かつ有望な戦略であり、麻疹(はしか)や天然痘など、数多くの病気の症例を劇的に減らしていた。エイズにも同様に対処できるように思われた。

「簡単な仕事になるだろうと思っていました」と、元ビル&メリンダ・ゲイツ財団の相談役で、現在は米メリーランド大学医学部に所属するエスパーザ氏は言う。「わたしたちはエイズウイルスの複雑さを理解していなかったのです」

 それから40年近くがたったが、HIVに対する有効なワクチン候補は未だに存在しない。新型コロナウイルス感染症を引き起こす新型コロナウイルスに対しては、その出現から1年足らずのうちに有効なワクチンが複数作られたにもかかわらずだ。

 しかし最近、新たな希望を抱かせる発見があった。2021年2月に開催された国際的なエイズ学会において、米スクリプス研究所と非営利のワクチン研究組織「IAVI」の研究者らが、新たなエイズワクチン戦略における第1相試験の有望な結果を発表したのだ。この結果についての論文はまだ出版されていないものの、4月初旬、あるTwitterユーザーが「これはすごいことだ」と投稿すると、そのツイートは何千ものいいねやリツイートを獲得した。

次ページ:エイズワクチン開発の3度目の波

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