白亜紀に、現在のモンゴルにあたる地域に生息していた恐竜シュヴウイア。この恐竜の目と耳の構造は、夜に狩りをしていたことを示唆している。(ILLUSTRATION BY VIKTOR RADERMAKER)
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 恐竜研究は今、黄金時代だ。化石や足跡から、恐竜の姿や暮らしに関するあらゆる種類の手がかりが見つかっている。そして今回、頭骨の中を調べた2つの研究で、恐竜の飛翔やコミュニケーションの解明につながる興味深い情報が得られた。(参考記事:「アップデートされる恐竜」

 5月7日付で学術誌「サイエンス」に発表された2本の論文は、恐竜やその他の爬虫類、鳥類の化石に保存された内耳や眼窩に焦点を当てている。これらを調べることで、失われた恐竜の暮らしの一端を知ることができるというのだ。

「動物の内耳の形状は、その生活様式や行動と関連しています」と、今回の研究に関与していない英エディンバラ大学の古生物学者ジュリア・シュワブ氏は説明する。例えば、私たち人間は内耳の働きによって特定の範囲の周波数の音を聞き取ることができるほか、内耳の形は二足歩行の平衡感覚と関連がある。

飛ぶための頭骨

 恐竜の頭骨は分厚い。おかげでその中にある内耳などの構造物は何千万年も保存されてきたが、直接観察するのは容易でない。そこで、今回「サイエンス」誌に掲載された論文のうちの一つでは、頭骨をX線スキャンする方法を用いた。

 米エール大学の大学院生マイケル・ハンソン氏と指導教官のバート=アンジャン・ブラー氏らの研究チームがスキャン画像で調べたのは、2億5200万年前から今日までの主竜類に属する動物たち。ベロキラプトルやシュヴウイアといった獣脚類の恐竜から、翼竜など恐竜以外の爬虫類、ヘスペロルニスなどの絶滅した鳥類、そして現生の鳥類やワニまで124体を調査した。(参考記事:「“最も誤解されている恐竜”ベロキラプトル、真相は?」

 白亜紀(1億4500万年前〜6600万年前)に生息していたトロオドン科の恐竜のスキャン画像を見た古生物学者たちは、その内耳が、ジュラ紀(2億100万年前〜1億4500万年前)に生息していた初期の飛ぶ鳥の内耳に似ていることを発見した。トロオドン科の恐竜の多くは空を飛ばないため、この発見は意外だった。

 こうした内耳の類似性は、空を飛ぶ生物に必要な進化的特徴を示していると同時に、飛翔の進化について新たな疑問も生じさせる。

 ブラー氏の仮説によれば、トロオドン科の恐竜は、鳥類との共通祖先(たとえば1億6500万年前に生息していた空飛ぶ恐竜アンキオルニスなど)から飛翔に適した耳を受け継いだのではないかという。内耳は、飛ぶための複雑な動きに適応し、動物が空中でバランスをとるのに役立った。一方で、地上の恐竜にとっては別の役割があった可能性がある。(参考記事:「羽毛恐竜に鳥のような翼を発見、始祖鳥以前」

「鳥に近い、空を飛ばない恐竜たちは、木に登ったり、斜面を駆け上がったりと、複雑な動きをしていたと私は考えています」とブラー氏は言う。このような行動は内耳の発達を促し、複雑な動きや四肢の制御を必要とする飛行を可能にしたのかもしれない。

次ページ:優れた聴覚を持つ恐竜、夜行性だった?

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