サメは「磁場の地図」を使える、回遊に利用か、研究

ウチワシュモクザメで実験、遺伝か学習かなどの詳細は不明

2021.05.11
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今回の研究の対象となったウチワシュモクザメ。米マサチューセッツ州ボストンのニューイングランド水族館で撮影。(PHOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY)
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 季節や成長にともなって移動する生きものといえば、渡り鳥やサケを思い浮かべる人がほとんどだろう。しかし、サメも世界中の海を回遊する。たとえばホホジロザメには、南アフリカとオーストラリア沖を往復するものがいる。また、レモンザメは自分が生まれたバハマの小さな島の沿岸に戻ることができる。(参考記事:「ニシレモンザメ、出産時の里帰りを確認」

 サメのこうしたナビゲーションについては長年の謎だったが、5月6日付けで学術誌「Current Biology」に掲載された論文で、ウチワシュモクザメ(Sphyrna tiburo)が地球の磁場を利用して行くべき方向を判断できることが示された。

「サメが磁場を検知し、それに反応することを示す論文はほかにもありますが、サメに地図のような感覚があることを示す研究はこれが初めてです」と、論文の筆頭著者で、米海洋大気局(NOAA)の生物学者であるケラー氏は述べる。

 サメのナビゲーションの理解が進めば、彼らの行き先を把握してより適切な保護区の設置に役立てられるかもしれない。サメは乱獲や汚染によって甚大な影響を受けており、海で暮らす18種類のサメやエイの数は、1970年に比べて70%減少している。(参考記事:「ここ50年で70%減少 外洋性のサメとエイをどう守る?」

磁場を変えると動きが変わった

 科学者たちは、何十年にもわたってサメのナビゲーションの仕組みを解き明かそうとしてきた。多くのサメは優れた嗅覚を持っている。これは目的地が近ければ役立つかもしれないが、匂いだけを頼りに長距離を移動するとは考えにくい。そのため、サメは地球の磁場を感じとって方向を判断するという説が有力だった。サメには電磁気を感じ取る器官があり、獲物の追跡に使っているが、それをナビゲーションにも使っているのかもしれない。(参考記事:「サメが広大な海を回遊できる理由が明らかに」

 地球の磁場は場所によって異なるため、サメの頭には「磁場の地図」のようなものがあり、それによって自分の居場所がわかるという仮説もある。

 サメを専門とするケラー氏は、この説を検証するため、20匹の若いウチワシュモクザメを米フロリダ州立大学の研究室に持ちこんだ。ウチワシュモクザメはシュモクザメの仲間で、繁殖のために生まれた場所に正確に戻ってくることから、実験の対象に選ばれた。

次ページ:磁場の地図が機能するとき・しないとき

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