医療用酸素が不足するとどうなる? インドに限らない酸素の危機

世界的に足りていない酸素、インドの状況は予見されていた

2021.05.08
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4月23日、インドのニューデリーで、新型コロナ患者の家族が空のボンベを積んだ荷車を押して、オールドデリーの酸素充填センターに急ぐ。新型コロナの第2波に襲われたインドでは、酸素不足が深刻だ。(PHOTOGRAPH BY NAVEEN SHARMA, SOPA IMAGES/LIGHT ROCKET VIA GETTY IMAGES)
4月23日、インドのニューデリーで、新型コロナ患者の家族が空のボンベを積んだ荷車を押して、オールドデリーの酸素充填センターに急ぐ。新型コロナの第2波に襲われたインドでは、酸素不足が深刻だ。(PHOTOGRAPH BY NAVEEN SHARMA, SOPA IMAGES/LIGHT ROCKET VIA GETTY IMAGES)
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 酸素投与は救命に欠かせない治療法のひとつだ。この数週間、インドで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死者数が急増し、その大切さが改めて浮き彫りになった。インドでは、酸素を運ぶ急行列車が東部のアンガルから首都デリーなどに急ぐ一方、あえぎながら死んでいく家族を見守るしかない人々の悲痛な叫びが、ソーシャルメディアにあふれている。

 新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によって、ブラジル、ペルー、ナイジェリア、ヨルダン、イタリアその他の国々でも、病院が医療用酸素の不足に直面した。米国も例外ではない。ニューヨーク市やカリフォルニア州では、一時、危機的な状況にまで酸素供給量が減少した。インドの危機とあいまって、現在、酸素不足が世界の注目を集めている。

 だが、こうした酸素不足はいまに始まったことではない。専門家は、低中所得国では毎年、救えるはずの多くの命が酸素不足によって失われており、パンデミックがその格差を深刻化させていると指摘している。

「酸素に関するシステムが長年にわたって非常に脆弱であったことを、新型コロナは露呈させました」と、低中所得国の医療に携わる国際的な保健機関、クリントン・ヘルス・アクセス・イニシアチブ(CHAI)のムフ・ラマトラペン氏は言う。「私が最も懸念していたのは、新型コロナのような事態が起きることでした」

 命を救うためにもっとも不可欠な要素のひとつである酸素。なぜ、それを手に入れるのがこれほど難題なのだろうか。

酸素はどれほど重要か

 地球の大気の大半は窒素が占めており、酸素は21%しか含まれていない。だが、世界保健機関(WHO)がユニセフと共同で作成した設備が行き届かない場所における酸素療法のガイドラインによれば、医療用酸素には82%以上の酸素濃度が求められている。第一次世界大戦当時、ヨーロッパ各地の前線でマスタードガスの被害を受けた兵士たちの治療に使用されたのが、現代の治療薬としての酸素の始まりだった。

 酸素療法は、新型コロナ感染症や、低所得国の子どもの主な死因である肺炎など、呼吸器疾患には特に欠かせない治療法だ。血液中の酸素濃度が下がる低酸素血症は、肺炎がもたらす致命的な合併症のひとつで、臓器が機能を停止し始めてしまう。

「細胞を維持するためには酸素が欠かせません」。カナダ、アルバータ大学の小児科学助教、マイケル・ホークス氏はこう話す。ホークス氏は、ウガンダを中心とした太陽光発電式酸素供給プログラムを監督している。「私たちの体に血が流れているのは、酸素を細胞に供給するためなのですから」

次ページ:酸素供給の改善で肺炎の死者数が半減

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