――尊敬する旅行家はいますか。
ナボンゴ氏:バーバラ・ヒラリー氏です。黒人女性として初めて、北極点と南極点に到達した人です。しかも、75歳と79歳のときにそれを成し遂げました。驚異的だと思いませんか。あとは、車椅子に乗って37カ国を訪れたコリー・リー氏。私には車椅子での生活は想像できませんが、障がいがあっても世界を見たいというリー氏の思いを止めることはできません。また、インスタグラムでフォローしているトラベリング・ブラック・ウィドウという女性は、31年間連れ添った伴侶を亡くした後、世界を見る旅へ出ました。そんな彼女が好きです。
多様性(ダイバーシティ)というと、多くの人の頭に思い浮かぶのは人種的多様性でしょう。けれど、障がい、年齢、体形など、多様性には様々な種類があります。すべての人が、受け入れられなければなりません。限界にとらわれることなく生きている人を見るのは、気持ちがいいです。
――旅行家としてのキャリアを築く前は国際開発を勉強し、国連とも仕事をされていたそうですね。この経験が今役立っていると思いますか。
ナボンゴ氏:確かに、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで政治や経済の歴史について学んだことによって、心が開かれ、世界についての知識が広がりました。国連との仕事も、大変興味深い経験でした。おかげで、植民地時代の後、世界がどう変わったかについて理解が深まり、それぞれの国が今どんな影響を及ぼしているかがよくわかるようになりました。 (参考記事:「コロナ禍が続く中、クルーズ船はなぜ運航を再開するのか」)
旅行とどう関係があるかというと、簡単な例として、かつて植民地だった国を結ぶ航空路線が挙げられると思います。特にアフリカにあるフランスの元植民地へ行くには、パリを通過するのが最も簡単です。フランス人が多く住んでいるため、フランスの航空会社が路線をほぼ独占していますから。
――一番危険だと思った場所はどこですか。
ナボンゴ氏:南スーダンの話をしましょう。米国大使館は、米国市民に南スーダンへ旅行しないよう強く呼び掛けています。危険すぎるとアドバイスしてくれた外交官もいました。政情不安のため、恐ろしいことも起こりました。けれど、この世界には100%安全な国も、100%危険な国もないと思っています。そこに行けば、求めているものを見ることができる。私が求めるものは人間性や愛ですから、それを見に行くことにしました。
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