コロナ禍で野良ネコたちに何が起きているのか

観光客が消えた「ネコの街」、動物たちが直面する苦境

2021.05.03
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 街に動物が増える一方で、動物を追い払う人間が減ったため、動物たちにとっては交尾の機会が増え、個体数がさらに増えることとなった。おまけに、ソーシャルディスタンス確保や予算上の理由で、避妊・去勢手術や譲渡プログラムが中断または制限された。(参考記事:「ネコに殺された232匹の動物たち、一枚の写真に」

「ギリシャのアテネでは、空腹のネコたちがとても大胆に道路を横断するようになりました。しかも、都市封鎖で交通量が大幅に減少したため、車は猛スピードで走るようになっていて、命を落とすネコが増えました」。慈善団体「Nine Lives Greece」の共同設立者、コーデリア・マッデン=カネロプル氏はそう語る。同団体のボランティアたちは1000匹以上のネコに餌をやっているが、それでも街に住むネコの「ほんの一部に過ぎない」という。(参考記事:「全米最長のネコよけフェンス、ハワイ島に完成」

アテネで野良ネコにペットフードを与える、非営利団体「Nine Lives Greece」のエレニ・ケファロプル氏。この団体のボランティアは、市内で1000匹以上のネコに餌をあげている。 PHOTOGRAPH BY ANGELOS TZORTZINI, AFP/GETTY IMAGES
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 人の目が減ると、傷ついたり病気になったりした動物が慈善団体や自治体に報告される機会も減る。イスタンブール郊外には野良動物のための病院兼リハビリテーションセンターがあるが、センターの獣医師長であるアーメト・アリ・ヤグシ氏によると、スタッフが市民から報告を受ける件数はパンデミック前の半分になっているという。

動物たちを守る

 動物たちを守るうえで、観光客や住民が果たしている役割は大きい。支援を必要とするイヌやネコについて報告することもそうだが、人々は動物のための慈善団体を設立したり、ボランティア活動をしたり、寄付をしたりする。しかし、パンデミックの影響でこうした支援が途絶え、多くの地元の団体が資金繰りに追われた。これによって、市民教育や、不妊手術プログラムを始めとする医療的処置など、より長期的な解決策の重要性が改めてはっきりした。

 とはいえ、観光業は必ずしも路上で暮らす動物のためになるとは限らない。「私たちが活動していたインドのある丘陵地では、地元の人たちが子イヌを家の外で籠に入れて観光客に売っていました」と、動物福祉団体「Humane Society International」のケレン・ナザレス氏は話す。また、土地によっては、観光シーズンを前に動物を毒殺することで、野良動物を敬遠するかもしれない観光客のために地域を「きれいにする」こともあるという。

 新型コロナウイルスの大流行は、野良動物たちが置かれている脆弱な状況を浮き彫りにした。カフェを訪れた観光客の膝の上で幸せそうにしている「愛されネコ」がいる一方で、同じ街の何百、何千もの野良ネコたちがおそらく、病気や虐待、事故などに遭っている。どこにでもいそうなネコやイヌを取り上げた、かわいらしい写真や魅力的な旅行記は、こうした野良動物たちの数が、健康に暮らしていくには多すぎるという事実を覆い隠してしまう。彼らはインスタグラムの「いいね!」で食べていくことはできないのだ。(参考記事:「外へ出たネコはどこへ行く? 大規模調査の結果がついに判明」

「コトルではネコが大きなビジネスになっています。どんな小さな観光客向けの店にもネコグッズがあふれていますが、そのお金がネコのために使われることはほとんどありません」とキング氏は言う。「私たちは、彼らが街の文化的な宝の一部として大切にされるべきだという考えを広めようとしているのです」

文=Jennifer Hattam/訳=桜木敬子

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