北米の古代都市カホキアはなぜ衰退? 「過剰な伐採」説を否定

世界遺産に登録された1000年前の大都市

2021.05.02
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 カホキア研究を主導し、ランキン氏の指導にもあたっているイリノイ大学のティム・ポーケタット氏も、文化による世界観の違いをもっと重く受けとめるべきだという意見に賛同する。「使いすぎたとか、失敗したというのは、西洋的な考え方です。西洋的な考え方から離れて、彼らがそれとは違う形で環境に触れていたことを尊重するのです」

 そう考えると、カホキア滅亡の裏には複雑な理由があった可能性が高い。米セントルイス・ワシントン大学の人類学者で、ランキン氏の論文を査読したトリストラム・キッダー氏は、「人間は、すべてを説明できる一つの原因を求めがちです。そのほうが、問題を簡単に解決できるように思えるからです」と言う。

 単純化とは、カホキア人が木を切ることをやめれば、すべてがうまくいっていたかもしれない、というような考え方だ。現在の例に当てはめれば、私たちが電気自動車に乗り換えさえすれば、すべてがうまくいくようになるかもしれない、ということになる。しかしキッダー氏は、現実ははるかに複雑で、その複雑さと向き合うことが必要だと言う。

 1993年に過剰伐採説を提唱した考古学者の一人で、現在はミズーリ州立大学に在籍するロピノット氏は、ランキン氏の研究を歓迎している。当時の仮説は、カホキアの謎を合理的に説明する試みの一つでしかなかったという。

 ロピノット氏はこう述べる。「カホキアは一夜にして衰退したのではなく、ゆっくりと滅びていったのです。人々が去っていった理由はわかりません。政治的な権力争いや戦争、あるいは干ばつや疫病かもしれません。まったくわからないのです」

 しかし、手がかりはある。末期のカホキア人は、町の中心部を囲うように防御柵を建てていた。つまり町の内部で争いが起こっていた可能性がある。さらに、この地域で大規模な干ばつが起き、食料生産が難しくなった可能性を示す予備的なデータもある。だが、こういった手がかりは、さらに詳しい調査が必要なものばかりだ。

 ランキン氏は、「物理学では、環境を整えて実験すれば、探していた答えを得ることができます。しかし、考古学ではそうはいきません」と話す。考古学では、現場に出かけていって発掘を行わなければ、何も見つけることはできない。

本文冒頭、「現在の米国イリノイ州セントルイス郊外にあるこの町は」は「現在の米国イリノイ州にあるこの町は」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。(2021年5月6日修正)

文=GLENN HODGES/訳=鈴木和博

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