北米の古代都市カホキアはなぜ衰退? 「過剰な伐採」説を否定

世界遺産に登録された1000年前の大都市

2021.05.02
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 調査したマウンドがあったのは川のそばの低地で、過剰伐採説が正しければ洪水が起きていたはずの場所だ。しかし、マウンドがあった場所の土壌で洪水による堆積物は見つからず、カホキアの繁栄期を通じて安定していたことがわかった。

 その結果を受けて、ランキン氏はこの過剰伐採説だけでなく、カホキアが環境の変化によって滅亡したという前提そのものを疑うようになった。資源の枯渇と環境の悪化によって社会が滅びるという考え方は、ここ半世紀ほどで説得力のある説として頻繁に使われるようになり、ときに環境および生態系の破壊を意味する造語「エコサイド」とも呼ばれている。

 エコサイド説がよく用いられるのは、私たちは過去の文明が環境の変化で滅亡したことを目撃し、現在の文明でも起きつつあると恐れているからだ。実際にそうであったかどうかにはよらず、過去の問題をすべて環境危機によるものと見てしまう傾向があると、ランキン氏は言う。

「ヨーロッパ人がやってくる前に北米に住んでいた人々は、放牧や集約的な耕作はしていませんでした。私たちは、彼らの農業システムを西洋的の視点で見てしまいます。しかし、考慮しなければならないのは、先住民的な視点や慣習なのです」

自然の資源をむさぼる文化だったのか?

 人類学では、カホキアはミシシッピ文化に分類される。ミシシッピ文化とは、紀元800年から1500年ごろにかけて、現在の米国の南東部に広がっていた農業文化だ。トウモロコシなどの作物を育て、土を積み上げたマウンドを作り、ある時点でカホキアに人が集まるようになった。政治、宗教、経済といった理由が考えられるものの、町が誕生した理由は明らかではない。だが、彼らが個人の利益のために自然の資源をむさぼっていたとは考えにくい。(参考記事:「北米最大の先史都市カホキアの謎に新事実」

 カホキア人がたくさんの木を切ったのは事実だろう。砦と考えられているものを建てるために、たくさんの木が使われていた。しかしヨーロッパ系の米国人たちのように、持続不可能となるような伐採をしていたとは限らない。

「バイソンに何が起こったかを考えてみてください」とランキン氏は言う。平原で暮らしていた北米の先住民たちは、ウシ科の動物バイソンを持続可能な程度に狩っていた。しかし、「ヨーロッパ人がやってきて、すべて撃ち殺してしまいました。できる限りのものを搾取するというのが、西洋の資源に対する考え方です。先住民の文化は、それとはまったく違うのです」

参考ギャラリー:アメリカ大陸 最初の人類 写真9点(2015年1月号)(画像クリックでギャラリーへ)
水中洞窟の骨から復元された、少女「ナイア」の顔。米大陸に最初に暮らした人々の顔は、現在の先住民とはあまり似ていない。だが遺伝子からは、共通の祖先をもつことが確認された。(Photograph by Timothy Archibald. Re-Creation: James Chatters, Applied Paleoscience; Tom McClelland)

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