ブラックホールの新画像、多波長観測で謎に迫る

「ここ数年でブラックホールはSF世界の存在から現実世界の存在になりました」

2021.04.19
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2021年3月に公開された、ブラックホールの磁場をたどることができる偏光画像。イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)の研究チームは、世界各地の電波望遠鏡を利用してブラックホールの画像を初めて作成し、2019年に公開した。天文学者たちは現在、同じ天体を複数の波長で観測して、その秘密をさらに解き明かそうとしている。(IMAGE BY EHT COLLABORATION)
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 地球から5500万光年の彼方にある巨大銀河M87の中心に、太陽の65億倍の質量をもつブラックホールがある。ドーナツのようなその画像は2019年に発表され、大きな話題となった。電波望遠鏡のネットワーク「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT:事象の地平線望遠鏡)」を利用し、科学者らが初めて撮影に成功したブラックホールの画像だ。(参考記事:「解説:ブラックホールの撮影成功、何がわかった?」

 今回、この国際研究チームがほかのパートナーたちとともに、M87銀河を複数の波長で同時に観測した成果を発表した。4月14日付けで学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に論文が掲載された。

 論文は、2017年に行われた多波長観測をまとめたもの。地上と宇宙の19の電波望遠鏡のデータが使われ、執筆には750人以上の科学者が名を連ねた。論文は、超大質量ブラックホールとそこから噴き上がる巨大ジェットについて詳しく描いている。これにより科学者たちは、ブラックホールの周囲で磁場や粒子や重力や放射線がどのように相互作用しているかを詳細に検討できるようになった。

「ここには物理学のすべてがあります」と、カナダ、マギル大学のダリル・ハガード氏は語る。「軌道が見えてきています。私たちはブラックホールのすぐ近くを見て、このエキゾチックな環境を探っているところです」

 オランダ、アムステルダム大学のセラ・マーコフ氏は、この論文について、「EHTをほかの研究者と結びつける論文の1つであり、EHTの意図を明確にするものです」と言う。「個人的には、すべてはここから始まると感じています」

 EHTチームは現在12日間の重要な観測を行っている。技術的な問題や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、2018年以来の観測となる。観測にはグリーンランドの施設を含む3基の新しい望遠鏡が新たに加わり、天候が良ければ、幅広い電磁スペクトルで空をスキャンする予定だ。

SF世界から現実世界へ

 極端な物理的性質をもち、入ったら二度と出てこられないブラックホールは、100年以上前から人々の関心を集めてきた。近年、EHTによる画像や、銀河系の中心部にある超大質量ブラックホールのまわりを高速で運動する天体の研究(この研究にはノーベル物理学賞が贈られた)や、ブラックホールどうしの衝突の観測から得られる豊富な情報などにより、ブラックホールの姿はよりはっきりとしてきた。

「ここ数年で、ブラックホールはSF世界の存在から現実世界の存在になりました」と、フランス、パリ天体物理学研究所のマルタ・ボロンテリ氏は語る。

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