コロナワクチン接種後のごくまれな血栓症、治療は可能

J&J製やアストラゼネカ製で発症、原因や診断法・治療法の研究進む

2021.04.16
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米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製の新型コロナウイルスワクチンは一時的に接種が停止された。米連邦保健当局がまれな血栓症の原因を検討している。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL CIAGLO, GETTY IMAGES)
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 米ジョンソン・エンド・ジョンソン社(J&J)と英アストラゼネカ社の新型コロナウイルスワクチンについて、接種後ごくまれに深刻な血栓が生じる事例が報告され、研究者たちが原因と対処法の解明を進めている。

 脳静脈洞血栓症(CVST)と呼ばれるこの疾患は、脳から血液が出ていく静脈洞と呼ばれる部位に血栓ができることで発症し、脳卒中やその他の脳障害を引き起こす。

 米連邦保健当局は4月13日、国内の6人の女性で接種後2週間以内に脳に血栓が生じたという報告を受けて、J&J製1回接種型ワクチンの使用中断を勧告した。患者の1人は死亡、もう1人は重体に陥り入院中だという。ヨーロッパでも、アストラゼネカ製ワクチンの接種後にCVSTを発症した事例が報告されている。

 ワクチンによらないCVSTを含め、血栓の治療には抗凝固薬のヘパリンが広く使用されている。だが、今回のワクチンに関連する血栓症では、ヘパリンが血栓を増やす恐れがある。そのため専門家は、この血栓症を一般の血栓症と識別して、どんな基礎疾患があれば発症しやすいのかを突き止めることが重要だと話している。

 とはいえ専門家は、すでにワクチン接種を受けた人が動揺する必要はないと強調している。米国ではすでに700万人近くがJ&J製ワクチンを接種済みなので、このような副反応が非常にまれにしか生じないことは明白だ。ただし米食品医薬品局(FDA)は、J&J製ワクチンの接種を受けた後に激しい頭痛や強い腹痛、脚の痛み、息切れなど、血栓の存在を示唆する症状が出た場合はかかりつけ医に連絡するように助言している。

「多くの場合、深刻な症状には明らかなパターンがあります。よく眠れなかった、などという程度のものではありません。また、発症期間は接種後およそ6~14日間と非常に限定的で、これが診断に役立ちます」と、米コーネル大学ワイル医科大学院の小児血液・腫瘍学者ジェームズ・ブッセル氏は説明する。

 これまでの報告によれば、この合併症を発症するリスクはわずか100万人に1人程度だ。専門家は、接種で得られるメリットが接種を受けないリスクをはるかに上回ると考えている。

 FDA生物製剤評価・研究センターのピーター・マークス所長と米疾病対策センター(CDC)のアン・シューカット所長代行の共同声明によれば、今回のJ&J製ワクチンの使用中断勧告は「万全を期すため」であり、この血栓症には特殊な治療を要するからだ。

 J&Jも実施中の治験を中断し、ヨーロッパにおける同社製ワクチンの接種開始を延期することを決定した。その一方で「専門家や保健当局と緊密に協力」しており、「ヨーロッパの保健当局とともに事例を慎重に調査している」とした。

 4月13日、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は「私たちは、この問題をできる限り早急に解決したいと考えています。世界各地で中断されているのもそのためです。少しの間、保留にするということです」と語った。「この問題をFDAとCDCに一任して、慎重に調査してもらいます」

次ページ:深刻で危険だが「治療は可能です」

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