史上初めて、火星の平原からヘリコプターが飛び立った。米国時間4月19日、NASAの小型ヘリコプター「インジェニュイティ」は、地面から約3メートル上昇し、ホバリングした後、赤いほこりを巻き上げながらゆっくりと着陸した。飛行時間は約40秒だったが、技術的には非常に大胆かつ画期的な成功となった。
「多くの人が火星で飛ぶことは不可能だと思っていました」と NASAジェット推進研究所(JPL)のインジェニュイティ・プロジェクト・マネージャーを務めるミミ・アウン氏は言う。「大気がとても薄いのです」
火星探査の空白を埋める
、火星でヘリコプターを飛ばすのは恐ろしく難しい。火星には、地球でいえば高度3万メートルの大気に相当する薄い大気しかないためだ。これまでに地球でヘリコプターが到達した最高高度は、1972年に、フランス人操縦士がマルセイユの北西にある空軍基地で飛行した1万2440メートルだ。
「私たちJPLは、あえて壮大なことに挑むのです」。JPLの公式モットーを引用して、アウン氏はコメントした。
インジェニュイティは背丈がわずか50センチの小型ヘリだが、NASAはいずれさらに大きなヘリコプターを使って、火星を新たな視点から調査する計画を描いている。火星を周回する探査機は、全球的な視点から惑星の構造や地質学的特徴をつかみ、一方で地表の着陸機や探査車は、鉱物や岩石層を間近で観察し、惑星の歴史をひも解く手がかりを探す。(参考記事:「時を超えて人類を魅了する「火星」」)
これにヘリコプターが加われば、周回機よりも詳細に、クレーターや渓谷、山の全体的な調査が可能になると、スミソニアン航空宇宙博物館の惑星科学探査学芸員のマット・シンデル氏は言う。また、岩壁や火山の斜面など、探査車が到達できない場所へも近づくことができる。
「周回機の視点と地上の視点との間にある空白を埋め、火星を地域単位でさらに詳しく観察できるようになるでしょう」
NASAのスティーブ・ユルチク長官代理は、将来的に「地平線の向こうを調査して、探査機の進行方向を事前に計画したり、火星の有人探査が可能になれば、宇宙飛行士のために事前探査をするという使い方もできます」と話す。
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