伝説の女戦士スカアハの聖地、英国スカイ島に行ってみた

ケルトの神話と歴史に彩られた、スコットランドの荒々しい自然の宝庫へ

2021.05.10
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半人半獣のいるコルイスク湖へ

 ダンスキー城からエイショート湖の対岸を見やると、島の中ほどにそびえるクィリン山脈の黒々とした山が、しわくちゃになった魔女の帽子のように立ち並び、過ぎゆく雲の行く手をふさいでいる。見渡す限り人影はほとんどない。スコットランド、スカイ島のこのあたりで頻繁に出会うのは、背の高い金色の草をゆらす風くらいのものだ。

 エルゴール村へ向かう道を外れたところにあるジュエリー工房「ダンカンハウス」では、ガース・ダンカン氏が、華やかな自作のケルト・ジュエリーを見せてくれる。ブローチ、紋章、指輪といった品々には、曲がりくねった複雑な模様が施されている。

 母国の米国で銀細工の技術を学んだダンカン氏は、20年前、古い血縁に引かれてスカイ島に移り住んだ。「父方の家系がスコットランドにつながりがあるのです。以前はまったく興味をもっていなかったのですが、あるときよく調べてみたところ、自分がこの古代の伝統を守りたいと思っていることに気がついて、こうした作品を作りはじめました」

「今ではほかの場所に住むことなど考えられません」とダンカン氏は言う。「このひっそりとした場所にいるのが好きなんです。エルゴールまで行かなくとも、村のうわさは全部伝わってきますから」

 次は小さな港町エルゴールに向かい、船旅専門の代理店「ミスティ・アイル・ボート・トリップス」を訪ねて、さらに人里離れた場所にあるコルイスク湖を目指す。

 エルゴールから海をわたった向こう側にあるこの湖へ行くには、船を使うのがいちばん早い。さもなければ、ここから16キロのルートを歩くしかなく、途中には「バッド・ステップ」と呼ばれる、岩の斜面をはうように進む場所もあるとなれば、この方法がいちばん手軽でもある。

スカイ島最西端に位置するニースト・ポイントは、クジラ、イルカ、ネズミイルカ、日向ぼっこをするサメを見るには絶好のスポット。(PHOTOGRAPH BY ALEXANDER TURNER, GUARDIAN/EYEVINE/REDUX)
スカイ島最西端に位置するニースト・ポイントは、クジラ、イルカ、ネズミイルカ、日向ぼっこをするサメを見るには絶好のスポット。(PHOTOGRAPH BY ALEXANDER TURNER, GUARDIAN/EYEVINE/REDUX)

 船上で双眼鏡を手にした代理店オーナーのシーマス・マキノン氏が、アザラシやカツオドリを指差した。

「あそこを見てください! はやく!」。2頭のミンククジラを見つけたシーマス氏が叫ぶと、一瞬見えたその姿に、ほかの乗客たちが息をのむ。クジラを見られるかどうかは運次第だと、シーマス氏は言う。

 幻想的な水の住人たちに出会えるかどうかも、同じく運次第だ。「コルイスク湖にはウリシュクがいると言われています」と、シーマス氏の息子サンディ氏が言う。「体の半分が人間、半分がヤギのウリシュクは、不運をもたらすと言われています。もしウリシュクに見つかっても、ここへは連れて帰らないでください。一切かかわりたくありませんから」

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