なぜクジラは座礁する? 仲間を救おうとして大量死することも

地形から人間の活動まで原因は様々、座礁したクジラの救助法も紹介

2021.04.09
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年5月30日、英国イングランド東海岸の町ホーランド・オン・シーの砂浜に打ちあがったナガスクジラ。クジラの座礁や漂着は世界的な現象だが、北海の浅い海岸でとりわけ多くみられる。(PHOTOGRAPH BY ROB DEAVILLE, CSIP-ZSL)
[画像のクリックで拡大表示]

 世界中で毎年、たくさんのクジラやイルカが岸に打ちあがる。健康な個体が座礁することもあれば、負傷した個体(または死骸)が風に吹かれて漂着する場合もある。

 英国ロンドン動物学会の「ストランディング(座礁・漂着等)クジラ調査プログラム(CSIP)」の記録によると、1990年以来、その数は1万2000頭以上。2015年にチリ南部のパタゴニア地方で報告された300頭を超えるイワシクジラの集団座礁や、2007~2019年の間にグアムの海岸にアカボウクジラが相次いで打ち上げられたことなどは大きな話題となった。(参考記事:「パタゴニアでクジラが謎の大量死」

 クジラたちがなぜ座礁したり漂着したりするのかを追究しようとすると、様々な要素が考えられる。「岸に打ちあがる数だけ、原因があると言えます」と語るのは、英スコットランドの海洋保護団体「クジラ目研究・救助隊」のディレクターを務めるケビン・ロビンソン氏だ。科学者たちに意見を聞いてみると、迷いやすい海岸線の地形から、人間による脅威まで、様々な原因が挙げられた。ここでは主な原因に加えて、集団座礁を起こしやすいクジラたちや、座礁したクジラを見つけたときの対処法なども紹介しよう。(参考記事:「クジラ座礁の原因に新説、太陽嵐で迷子に」

地形

 海岸の地形や潮汐の影響などにより、座礁が起こりやすい場所がある。たとえば、ニュージーランドのフェアウェル・スピットや北海の海岸線、米国東海岸のケープコッドでは、たびたび集団座礁が起きている。スコットランド海洋生物ストランディングプログラムのニック・デイビソン氏によると、これらの水域はクジラやイルカには浅すぎて、深い海向けにできているクジラ類のエコーロケーション(反響定位)能力が効かなくなるためだという。

 また、干潮時に数分間で数キロも潮が引いてしまう場所では、海洋生物が海に戻る時間もなく、その場に取り残されてしまうことがある。ニュージーランドのクジラ保護団体「プロジェクト・ヨナ」のダレン・グローバー氏は、浅瀬に入り込んでしまっていることに気付かずにいると、潮が引いた時に大変なことになると説明する。「突然海水が消えて、クジラたちは陸に取り残されてしまいます」

自然の要因

 英国ダイバーズ海洋生物救助隊のダン・ジャービス氏は、病気や怪我、老齢、迷子、空腹、難産による体力低下などの要因を挙げる。弱った個体は、波に流されて海岸に漂着する。または、方向感覚を失って浅瀬に迷い込んでしまう。

 捕食の際に座礁してしまうこともある。これは、捕食する側であってもされる側であっても起こりうる。

 グローバー氏は、シャチに追いかけられたイルカや、エイを追いかけていたシャチが岸に乗り上げてしまった例があったと話す。わざと浜辺に体を投げ出して獲物を捕らえるのは、シャチが良く使う戦術だが、時に計算を間違えて自分が海に戻れなくなってしまうことがある。そんなときは、高い波が来て体をさらってくれるのを待つしかない。

次ページ:人間にも責任の一端が

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

unknown(未知の海)

20年以上、世界各地の海の写真を発表してきた水中写真家、鍵井靖章が今回選んだテーマは、見たことのない「未知の海」。232ページ、写真193点の大ボリュームで魅せる水中の絶景を、五つの切り口で存分に味わえます。

定価:3,520円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加