巨大魚オオナマズを含め3種を放流、メコン水系保護の第一歩

カンボジア、トンレサップ湖の大規模プロジェクトを追いかける

2022.04.03
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カンボジアのトンレサップ川でメコンオオナマズを放したゼブ・ホーガン氏とカンボジア人の同僚。2007年11月撮影。このたび、巨大魚の個体群を回復するプログラムの一環として、近絶滅種のメコンオオナマズがトンレサップ湖に放流された。(PHOTOGRAPH COURTESY ZEB HOGAN)
カンボジアのトンレサップ川でメコンオオナマズを放したゼブ・ホーガン氏とカンボジア人の同僚。2007年11月撮影。このたび、巨大魚の個体群を回復するプログラムの一環として、近絶滅種のメコンオオナマズがトンレサップ湖に放流された。(PHOTOGRAPH COURTESY ZEB HOGAN)

 3月、東南アジア最大の湖であるカンボジアのトンレサップ湖に、体長約1.5メートルのメコンオオナマズなど、絶滅の危機にある世界最大級の淡水魚が放流された。放流された魚が生き延び、野生の生息数が回復に転じることを科学者たちは期待している。数十年にわたる乱獲やダム建設によって、トンレサップ湖の大型淡水魚はその数を大幅に減らしている。

 こうした人間の活動による脅威は今も存在する。今回放流されたメコンオオナマズパーカーホカイヤンは、カンボジアに暮らす約1500万人を支える漁業の危機を示す存在とみなされている。

「今回の放流は重要ですが、巨大魚の長期的な回復に必要な活動の第一歩にすぎません」と米ネバダ大学リノ校の魚類学者ゼブ・ホーガン氏は話す。ホーガン氏は米国際開発庁(USAID)の研究プロジェクト「ワンダーズ・オブ・ザ・メコン(メコン川の驚異)」のリーダーとして、今回の放流の調整役を務めた。

 トンレサップ湖は6カ国を流れるメコン川とつながっている。メコン水系は世界最大の種を含む1000種近い淡水魚が暮らす生物多様性のホットスポットだ。

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 大型淡水魚は地球上で最も脅威にさらされている動物の一つであることが、複数の研究で示されている。ホーガン氏によれば、体重約300キロと、ヒグマほどの大きさにも達するメコンオオナマズと、同じくらいの巨体になるコイの仲間パーカーホは、この数十年で90%以上も数が減っているという。ホーガン氏はメコン水系の巨大魚を長く研究しているが、2015年以降、野生のメコンオオナマズには遭遇していない。

カンボジア、トンレサップ湖の魚類保護区に導入されるカイヤン。(PHOTOGRAPH COURTESY ZEB HOGAN)
カンボジア、トンレサップ湖の魚類保護区に導入されるカイヤン。(PHOTOGRAPH COURTESY ZEB HOGAN)

 また、今回放流された魚の大部分を占め、体長1.2メートルを超える個体もいるカイヤンは、かつてメコン水系に暮らす人々の主食だった。しかし、同じく数が激減し、現在は国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種(Endangered)に分類されている。

「漁獲圧力が持続可能なレベルを超えると、これらの魚は真っ先にいなくなります」とナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあるホーガン氏は話す。

 現在、メコン水系に生息する大型魚の多くが飼育下で繁殖されている。しかし、遺伝的多様性に欠けるため、野生に導入すると、うまく繁殖しない可能性がある。

 これに対し、今回放流した魚は、カンボジア南東部の研究センターで飼育されたものだが、ここで繁殖したわけではない。種が判別できないほど小さいときに、野生で捕まえられた魚たちだ。

 体長1.5メートルのメコンオオナマズは、魚を扱う地元の業者から研究センターに寄贈された5匹のうちの1匹だ。13年前、池で飼育できないほど巨大なナマズになるとは知らず、点にしか見えない稚魚を捕まえたのだ。

次ページ:放流への道のり、壁は乱獲

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