動物が何千、何万と集まっているとそれだけで目を奪われるが、ホシムクドリの群れはなかでも壮観だ。一糸乱れぬバレエダンサーのように、夕暮れの空をバックに動きを合わせ、旋回したり、急降下したり。それは息をのむような美しさで、多くの人が足を止めて見物する。
ホシムクドリ(Sturnus vulgaris)はユーラシア大陸を主な原産地とするムクドリの仲間で、こうした巨大な群れは、秋から冬にかけて南へ移動する際の休憩地で見られる。この間、ホシムクドリはねぐらの木から1日に約100キロも移動して、植物の種や昆虫、幼虫などを食べ、再び集合し、長ければ45分もの間、群れで飛び回る。
もちろん、鳥が群れをなして移動するということ自体は何も新しくない。鳥類学者が長年にわたって研究してきたことだ。しかし、ホシムクドリほど協調性と複雑なパターンをもって飛ぶ鳥は他にいない。彼らは時に、75万羽もの集団を作って飛ぶ。さらに、至る所で見かけるにもかかわらず、なぜ彼らがこうした動きをするのかについては、あまり知られていない。
「結論を言えば、私は50年間これを研究してきましたが、いまだにわからないのです」。1960年代、ホシムクドリの行動に関する初期の研究を行った、米ロードアイランド大学名誉教授の鳥類学者、フランク・ヘップナー氏はそう話すが、これまでにわかったこともある。
イタリア、ローマ大学の物理学者アンドレア・カバーニャ氏は、過去16年間にわたり、ホシムクドリがどのようにして正確かつ優雅に動きを同期させるのかを研究してきた。そのために同氏は、ローマの500人広場上空に集まるホシムクドリの群れの、高度な3Dモデルを作成した。この広場にやってくるホシムクドリの数は過去10年間で倍増し、およそ100万羽にもなっている。
ホシムクドリが冬の渡りを行う間、カバーニャ氏は共同研究者のイレーネ・ジャルディーナ氏とともに、広場の南西側にあるマッシモ宮の屋根の上に設置した3台の高速度カメラを操作する。
「毎年冬になると、冷たい雨の中、毎晩のように屋根に登っています。そこにいるのは私たちと彫像だけです」
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