【動画】北極に発生したオーロラの渦「宇宙ハリケーン」のイメージ。目に見えない巨大なプラズマの渦から地球の磁力線(緑色の線)に沿って電子(オレンジ色の帯)が「降り注ぐ」ことによって発生する。(MARK GARLICK)

 太陽から地球に向かって高エネルギー粒子が放出されると、地球の北極や南極の空に美しい光の帯が現れる。オーロラだ。けれども時折、北極の上空に不鮮明な謎の光が漂っていることがある。太陽活動が静かな時期に現れるこの光の正体は何なのか、どのようにして作られているのかは、これまではっきりしていなかった。

 国際的な科学者チームが、ついにその謎を解き明かした可能性がある。科学者たちはこの光を、オーロラがハリケーンのように渦巻き状に回転しているものではないかと考え、「宇宙ハリケーン」と名付けた。2月22日付けで科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に論文が発表された。

 研究チームは、人工衛星が収集してきたデータを解析し、北極上空のオーロラの活動をかつてないほど詳細にとらえた。論文によると、2014年に北極上空に現れた珍しいオーロラにはハリケーンの「目」に相当する穏やかな中心部があり、そのまわりにプラズマ(正負の電荷をもつ粒子が混ざり合ったガス)の強風が渦巻いていたという。宇宙ハリケーンは8時間前後続き、直径は1000km以上あり、海面から100km〜800kmの高さの宇宙空間まで広がっていた。

 2014年以前に観測された同様のオーロラも、宇宙ハリケーンであった可能性がある。だが、「その形態や挙動において本当にハリケーン状であることを確認できたのは今回が初めてです」と、論文の共著者であるノルウェー、ベルゲン大学の宇宙物理学者キェルマー・オクサビク氏は語る。

 しかし、宇宙ハリケーンがどれほどの頻度で発生するのか、また、そのエネルギーのどのくらいの部分が地球大気に移行するのかなど、まだわからない部分もある。

宇宙ハリケーンを探す

 論文の筆頭著者である中国、山東大学の張清和氏は、ここ数年、米国の防衛気象衛星計画(DMSP)などの衛星データに目を通し、興味深い高層大気現象を探していた。DMSPは、もともとは1960年代に米国が世界の気象状況を把握し、米軍の軍事行動計画に役立てるために設立したプログラムだが、現在は機密解除されている。

 木星、土星、天王星、海王星の大気には、ハリケーン状のものがある(木星の大赤斑はその一例だ)。それなら、ほかの惑星の最上層の大気にも同じようなものが存在するのではないかと、張氏は考えた。そうしてまずは多くの人工衛星に取り囲まれている地球から探してみることにしたのだという。

 これまでにも人工衛星が北磁極の上空にオーロラのようなものを発見したことがあったが、人工衛星の軌道や搭載されているカメラの関係で、ぼんやりとしか見えなかった。しかし、米国の軍事衛星はもっと地球に近い軌道を回っているし、それらの現象をはっきりとらえられる観測機器も搭載している。とはいえ、出現時期も特徴もわからない宇宙ハリケーンを発見するのは容易ではなかった。「自分が何を探しているのかわからないまま探すのですから」とオクサビク氏は言う。

 2014年8月20日、北磁極の真上で回転するオーロラを、人工衛星はとらえていた。しかしこの日の太陽活動は、オーロラにふさわしいものではなかった。太陽の磁場の向きは強いオーロラを発生させるには不適切で、太陽風(太陽から宇宙空間に向かって放射される粒子や磁気の流れ)の動きは遅く、高エネルギー粒子も多くなかった。

 ではなぜ、このオーロラは発生したのだろう?

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