430頭以上のマナティーが死亡、前年の3倍ペース

米フロリダ、原因は「餓死」と獣医師は推定

2021.03.21
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米フロリダ州では水底にかつて自生していた海草が減少している。ウェス・スキルズ・ピーコック・スプリングス州立公園(写真)もそのひとつだ。このような水生植物の枯渇は、冬場に多くのマナティーが餓死する原因になっている。(Photographs By Jason Gulley)

 2021年に入ってから、米国フロリダ州の水域で430頭以上ものマナティーが死亡している。これは、昨年同時期のほぼ3倍にあたる数だ。

 この気がかりな事態を受け、海洋生物学者や獣医師たちはただちに原因の究明に乗り出した。フロリダ州魚類野生生物保護委員会の救助スタッフたちも、体調を崩したマナティーの保護に懸命の努力を続けている。

餓死?

 保護委員会の獣医師マルティーヌ・ド・ウィット氏が、マナティーの死亡数が増えていることに気づいたのは、冬の初めのことだった。当初は、低温によるストレスが原因だろうと考えた。水温が20℃を下回ると、体調を崩す個体がいる。12月と1月には、水温が20℃を切ることが何度かあったからだ。

「でも、冬が本格的になるにつれて、何かがおかしいと感じるようになりました」と、ド・ウィット氏は振り返る。

 水温の変化に敏感なマナティーは、寒くなるとインディアンリバー・ラグーンに避難する。このラグーンは、フロリダ州大西洋岸のポンセ・インレットからジュピター・インレットに伸びる入江の一部にあたる。水深が浅く、海から隔てられているので、冬でも水温が比較的高い。だが、死亡事例の大半はこの水域で発生した。

 若いマナティーが低温ストレスで死亡することは珍しくない。しかし、今回の死亡例では、おとなのマナティーが大きな割合を占めており、その多くはやせ細っていた。「おもな死因は餓死だと思います」とド・ウィット氏は言う。

 マナティーが飢えに陥ったのは餌となる海草が欠乏したためだが、その一因は水質汚染にあるとド・ウィット氏らは考えている。このラグーンには、農薬や芝生の肥料、汚水処理タンクからの水漏れによって、毎年1100トン近くの窒素とリンが流れこんでいる。

フロリダ州ファニング・スプリングスで水生植物を食べる2頭のフロリダマナティー。マナティーは大変旺盛な食欲の持ち主で、一日に体重の約10%に相当する植物が必要だ。(Photographs By Jason Gulley)

 米フロリダ大学獣医学部の水生動物健康部門の共同ディレクター、マイク・ウォルシュ氏によれば、マナティーが体調を良好に保つには、一日に体重の10%に当たる量の海草や、マングローブの葉、クロモなどの水生植物を食べる必要がある。

 マナティーがまるまるとしているのは、保温のために厚い脂肪の層があるからではなく、消化管が非常に大きいためだ。「体重が減少したマナティーは、二次的な問題を生じたり、寒さのような要因に対処できなくなったりします」とウォルシュ氏は話す。ヒレに凍傷のような病変ができるマナティーもいるという。

20世紀には数百頭に減少

 マナティーを保護するための法律は英国が東フロリダを統治した18世紀にさかのぼり、北米最古の野生生物保護法のひとつとなっている。しかし、1900年代半ばには、この穏やかな水生哺乳類が200~300頭にまで減少してしまった。

 そこで1967年、米国内務省は、新たな絶滅危惧種保護法に基づく最初の保護リストにフロリダマナティーを指定、個体数を回復させる措置を義務づけた。その後、生息数は持ち直し、2017年には、米国魚類野生生物局が「絶滅危惧種」の指定からマナティーを除外した。

 だが、フロリダ州の保護団体「セーブ・ザ・マナティー・クラブ」の理事で生物学者のパトリック・ローズ氏は、この決定を不適切だと考えている。「それは、現在と予測可能な将来にわたって、マナティーへのリスクと脅威を人間が抑えることができればの話です。でも、実際にはそうではありません」

フロリダ州クリスタル・リバーのスリーシスターズ・スプリングスからキングス湾につながる水路を泳ぐマナティー。沿岸の開発によってマナティーの生息域は減少を続け、マナティーと船の距離はますます近くなっている。(Photographs By Jason Gulley)

次ページ:餌が減ったのはなぜ?

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