アマゾン 樹上の昆虫たち

塔を使った調査で、数百の新種を含む多様な昆虫が発見された

2021.03.26
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熱帯に生息する玉虫色のシタバチの一種。マルハナバチやミツバチの仲間だ。ブラジルの調査塔で採取されたおびただしい数の昆虫の一つ。(PHOTOGRAPH BY BRIAN BROWN)

*この記事の昆虫写真はすべて、米ロサンゼルス郡立自然史博物館の昆虫担当責任者ブライアン・ブラウンが撮影した。使用した顕微鏡カメラは、半導体チップの欠陥を検査するために開発されたものだ。
この記事は、 雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2021年4月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

アマゾンの熱帯雨林で行われた新しいタイプの調査により、地表から遠く離れた木の上に数百種の昆虫が生息することが判明した。

 1月のさわやかな朝、ブラジルのアマゾン川沿いの港町マナウスで、私は昆虫学者たちと調査旅行に備えてスーパーに立ち寄った。

 20分後、レジに並んだ同行者たちが手にしているものを見たとき、自分だけ買い出しの目的が違っていたことに気づいた。

 私はピーナッツやレーズン、虫よけスプレーなどを選んでいた。一方、全員が双翅目、つまりハエ類の専門家である昆虫学者たちは、傷んだ野菜や果物、消費期限が間近の鶏肉、ピーコックバスという淡水魚の切り身などをどっさりと買い込もうとしていた。

「腐りかけのトマトやジャガイモ、タマネギを探して選んできたよ。ハエの好物だからね」と、ブラジルのサンパウロ大学の昆虫学教授ダルトン・デ・ソウザ・アモリムは言った。

 アモリムによると、ハエの研究者は通常、腐った食べ物を餌にして、地面にわなを仕掛けるという。研究対象の大半が地表に集中しているためだ。だが今回の調査旅行に集まった面々には、これまでとは違う新しいミッションがあった。メンバーは、アモリムの研究仲間である米ロサンゼルス郡立自然史博物館の昆虫担当責任者のブライアン・ブラウン、カナダのオンタリオ州にあるゲルフ大学の名誉教授スティーブン・マーシャル、そしてブラジルの国立アマゾン研究所(INPA)のホセ・アルベルティーノ・ラファエルと、二人の研究助手だ。

アモリムはサンパウロ大学の教授で、双翅目の研究者はガやチョウが大嫌いだとふざけて言う。色が鮮やかできれいなため、ハエよりも注目と称賛を集める上に、トラップにかかると、羽から落ちた鱗粉(りんぷん)がほかの虫に付いて調査の妨げになるからだ。(PHOTOGRAPH BY CRAIG CUTLER)
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ホセ・アルベルティーノ・ラファエルはブラジルの国立アマゾン研究所の研究者で、10代の頃から昆虫の研究を志していた。ブラジル南部のマリンガで育ち、チョウや甲虫などの昆虫を採取。「母は、クモがいるから嫌だと言って、私の部屋の掃除は絶対にしてくれませんでした」と話す。(PHOTOGRAPH BY CRAIG CUTLER)
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 私たちがこれから目指すのは、手つかずの熱帯雨林のただ中にそびえ立つ高さ40メートルの鉄塔だ。この塔は1979年に建設され、長らく森林と大気の間で交換される二酸化炭素量を測定するために使われてきたが、近年、昆虫学の先駆的な試みの場としても利用されるようになった。

次ページ:塔を使ってハエ調査

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