野生の楽園オカバンゴに汚染の懸念、上流の石油試掘で不正か

廃棄穴に漏出防止シート敷かず? 地下水汚染の恐れ、ナミビア

2021.03.19
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「環境面から言うなら到底受け入れられないし、社会面から言うなら無謀で恥ずべきことです」。そう話すのは、南アフリカのユニオンデールを拠点とし、何十年にもわたって掘削関連のプロジェクトに携わってきた工学地質学者でコンサルタントのヤン・アーカート氏だ。「この地域は生活用水や農業用水を完全に地下水に依存しています。そして、帯水層が汚染されれば、汚染物質の封じ込めや浄化は不可能でしょう」

 アーカート氏によれば、掘削がすでに始まっている今、ピットにライナーシートを施すことは容易ではない。複数の工程が必要だ。まず、すでにある廃棄物を除去する。それを適切な施設で処理する。ライナーに穴が開かないよう、下に砂利層を整える。そしてライナーを敷く。ライナーは輸入する必要があるかもしれない。各工程は最低でも3〜4週間ずつかかるだろうと氏は言う。

「掘削装置から出る掘削液が、ライナーなしの廃棄物ピットに排出されているように見えます」。石油・ガス業界の元探査地質学者で、米国内のプロジェクトに携わってきたマット・トッテン・ジュニア氏は、リコンアフリカ社の動画と静止画を見てそう話す。「装置の横にある掘削液が排出されたであろう池に、こげ茶色に変色した部分があることに注目してください」

 さらにドイツのニュース番組「VOX」が3月4日に公開した掘削現場の空撮映像を見たトッテン氏は、もはや満杯になっている廃棄物ピットにもまだ「ライナーがなく、恐らく雨水と掘削液が混ざったものでいっぱいになっているようです」と述べた。

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アフリカスイギュウが蹴り上げ、糞(ふん)を残すことで土壌は肥沃になる。オカバンゴでは生物が自然景観を形づくり、自然景観が生物を支えている。(PHOTOGRAPH BY BEVERLY JOUBERT,NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 リコンアフリカ社は、廃棄物ピットに関する幾度ものコメント依頼に応じなかった。

 ナミビア政府から試掘井の掘削許可を得るために、リコンアフリカ社は環境への影響を評価する必要があった。同社が作成した報告書には廃棄物貯蔵池への言及があり、「貯蔵池に溜まった廃棄物をすべてかき出し、これらの廃棄物および貯蔵池に施したライナーを適切な場所に処分する」と記されていた。

 2月17日に欧州物理探査学会(EAGE)が主催したアフリカにおける石油・ガス開発に関するズーム会議に参加したアーカート氏は、リコンアフリカ社のスコット・エバンス最高経営責任者(CEO)に、なぜピットにライナーを施さなかったのかと質問した。

 エバンス氏はその質問に直接答えなかったが、カナダではこの液体が 「肥料として使われています」と述べた。さらに、「我々の作業が終わったら、地元の(農家の)人たちと肥料を導入するためのちょっとした実験をするつもりです」とも話した。

 アーカート氏によると、その答えは「奇妙としか言いようがありません」。エバンス氏が言っているのは、掘削液のことだけだからだ。しかし何より危険なのは、自然界に存在するベンゼン、エチレン、トルエン、キシレンなどの化合物や、石油が発見された場合に地表に出てくる放射性物質を含む水だ。「ライナーのない池に貯蔵されているのは有毒な液体廃棄物のカクテルのようなもので、有害物質用の埋立場で処分するほかありません」とアーカート氏は言う。

 他の専門家も同意見だ。石油・ガス層を掘削する際に坑井から上がってくる水は、「一般的に高塩濃度で油脂を含み、有毒な有機化合物や無機化合物、そして自然に存在する放射性物質を含む可能性があります」と南アフリカ、フリーステート大学の地下水文学者スリーナ・エスターフイゼ氏は言う。2016年に学術誌「Environmental Health Perspectives」に発表された研究によると、それらの化学物質の中には、ヒトにおいてがんや先天性欠損症、生殖障害を引き起こすことが証明されているものもある。

 2009年の米魚類野生生物局(FWS)の報告書では、廃棄物ピットは農地、小川、飲料水源を汚染し、「渡り鳥やその他の野生生物を閉じ込め、死なせる可能性がある」とされている。

 地域の脆弱な生態系を守るために、リコンアフリカ社がナミビアで初めて試作用廃棄物ピットを設けるにあたり、どのような方法を採用したのかは不透明だ。

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文=JEFFREY BARBEE AND ANDLAUREL NEME/訳=桜木敬子

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