ニュージーランド東岸沖で、深海のサメ3種が光を放つ(生物発光を行う)ことが新たに確認され、学術的に記録された。そのうちの1種であるヨロイザメは、体長が1.8メートル近くに成長し、生物発光する脊椎動物としては世界最大となる。研究チームは発光の仕組みについても調査し、皮膚にある特殊な細胞がやわらかな青緑色の光を作り出していることも判明したという。研究成果は、2月26日付けで学術誌「Frontiers in Marine Science」に発表された。
ちなみに無脊椎動物では、ヨロイザメより大きくなるダイオウイカも、光を発することが知られている。
サメの生物発光として記録があるのは、これまでは十数種だった。今回の発見は、生物発光という機能がどれほど一般的かを知る手がかりになると、ベルギーのルーバン・カトリック大学研究員で、研究の筆頭著者であるジェローム・マレフェ氏は述べている。
今回の調査で発光が確認されたのはヨロイザメ(Dalatias licha)のほか、カラスザメ科のフジクジラ(Etmopterus lucifer)とトゲニセカラスザメ(Etmopterus granulosus)の計3種。いずれも「トワイライトゾーン」と呼ばれる、光がわずかにしか届かない水深200~1000メートルの層から引き揚げられた。
ヨロイザメが調査船の上で発光しているのを見たとき、「思わず泣きそうになりました。それだけすばらしい発見でしたから」と、マレフェ氏は振り返る。
ほかの2種はヨロイザメよりもいくらか小さく、またこれら3種はどれも、ときどき漁師の網に偶然かかるものだという。絶滅が危惧される種ではないが、その生態についてはほとんどわかっていない。
暗闇に光る
2020年1月、マレフェ氏と、ルーバン・カトリック大学およびニュージーランド国立大気水圏研究所の研究者チームは、深海トロール船の上で1カ月を過ごした。網に生きたサメがかかれば、それを海水タンクに入れて暗い部屋へ運び、生物発光の兆候を探した。(参考記事:「発光するサメの謎、仕組みを解明」)
ストレスのためか、青緑色の輝きを研究者たちに披露してくれたのは、ヨロイザメ、フジクジラ、トゲニセカラスザメのうちごく少数の個体だけだった。
ホタルを含む発光生物の大半は、酸素と反応して光を生成する化合物ルシフェリンなど、特定の化学物質を含む特殊な細胞や器官を持っている。光を発する生物の中には、深海にすむアンコウのように、発光バクテリアの宿主となることで光を手に入れているものもいる。(参考記事:「ホタルの発光原理に新説、余剰電子が関与」)
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