米国西部でチョウが減っている。過去40年のデータから、450種以上のチョウの個体数が年平均で1.6%減っていることが判明、3月5日付けで学術誌「Science」に発表された。
チョウははかなく美しいだけでなく、様々な植物の花粉を媒介している。それが、米西部では急速に姿を消しつつある。
よく知られているオオカバマダラは、個体数が99%も激減したにもかかわらず、米国の絶滅危惧種法による保護の対象としない決定が2020年12月になされた。しかし今回の調査では、あまり知られていない種が絶滅に向かっていることが明らかになった。シジミチョウの仲間イカリオイデスヒメシジミ(Icaricia icarioides)やカリフォルニア州の州蝶であるモンキチョウの仲間、カリフォルニアイヌモンキ(Zerene eurydice)といったチョウだ。
「どの種も減少しています」と、米ネバダ大学リノ校の生物学教授で、今回の研究を率いたマシュー・フォリスター氏は言う。「あらゆる種が危機に直面しているのです」
科学者たちは今回、チョウにとって最大の脅威と思われる気候変動に着目した。1972年から2018年までに集めた、米西部70カ所におけるチョウの目撃データと気候データを分析したところ、驚きの事実が判明した。フォリスター氏によると、チョウの個体数が減少した原因として最もはっきり表れたのは「暖かい秋」だった。
全米の200以上の都市で秋の気温は上昇しているが、その中でも南西部での上昇は激しい。例えばアリゾナ州では、1895年以降10年ごとに秋の気温が華氏0.2度(摂氏約0.1度)ずつ上昇している。そのためか州内では、オレンジと黒の鮮やかなチョウ、ルリボシヒメアカタテハ(Vanessa annabella)が年間3パーセントの割合で減少している。
「私たちはここ数十年、春(の温暖化)に着目してきました」とフォリスター氏は言う。しかし、「暖かい季節の終わりの温暖化にこそ、大きなマイナスの影響があったのです」
秋の温暖化がチョウの減少促す
研究者たちは、チョウが最も減少している場所を調べるため、シアトルやサンタフェ、ツーソンにいたるまでの70カ所で、40年分の学術データと市民が集めたデータに目を通した。データのほとんどはチョウの目撃情報だ。
研究チームは3つのデータセットを用いた。1つ目は、学術的なもの。2つ目は、米カリフォルニア科学アカデミーとナショナル ジオグラフィック協会の共同プロジェクトである、クラウドソーシングデータサイト「iNaturalist」のもの。そして3つ目は、北米蝶協会のものだ。
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