南極上空に「大気の川」、失われる氷を補充していた、研究

南極氷床の消失スピードを左右する気象条件が判明、宇宙から観測

2021.03.10
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南極大陸の沖合に見えるリビングストン島。宇宙から南極の氷を研究する新しい手法によって、南極の積雪量を正確に調べることが可能になった。(PHOTOGRAPH BY WOLFGANG KAEHLER, LIGHTROCKET/GETTY IMAGES)
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 南極の上空を流れる「大気の川」が、南極の巨大氷床の消失スピードを大きく左右しているらしいことが最新の研究で明らかになった。南極の氷床消失は世界的な海面上昇につながるため、その変化を正しく見積もる必要がある。今回の研究は、3月2日付けで地球物理学の専門誌「Geophysical Research Letters」に発表された。

 大気の川は、巨大な水蒸気の帯だ。熱帯や亜熱帯の海上で形成され、地球を一周する風に乗り、ときに大量の雨と雪を降らせる。有名なのは「パイナップル・エクスプレス」と呼ばれる大気の川で、米国西海岸で使われる淡水の多くを供給している。

 研究チームは、2018年9月に打ち上げられた米航空宇宙局(NASA)の地球観測衛星「アイスサット2(ICESat-2)」のデータを用いることで、大気の川が2019年に西南極全域に降水(主に降雪)をもたらす大きな原因となったこと、急速に失われつつある氷床の補充に役立っていることを示した。

 海洋が温暖化すると、今よりも大きく、長く持続する大気の川が、南極大陸に送り込まれると推定されている。ただし、それが南極の氷床にどのように影響するのかは、まだ十分に研究や解明が進んでいなかった。

「(アイスサット2の)最初の数カ月分のデータを見ただけで、降雪量の大幅な増加があったことがわかりました」と、論文の筆頭著者で米カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所の博士課程に在籍するスシール・アドゥスミリ氏は話す。降水量の増加は、この地域の上空に大気の川が流れていた時期と一致したという。「本当に驚きました」

宇宙から見つけた大量降雪

 南極大陸は毎年1000億トン以上の氷を失っている。海に流れ込む氷河から巨大な氷山が分離するためだ。この2月末にも、南極の棚氷が割れて1270平方kmの氷山が分離した。これは東京23区の2倍や沖縄本島の面積を上回る。

 南極大陸では、深層から上昇してくる温かい海水によって氷の損失が加速している。この温かい海水が、海に浮かぶ棚氷を下から解かすうえ、その棚氷がせき止めていた氷河が、海に流れ込みやすくなっているためだ。こうした状況は気候変動によって悪化する可能性が高い。(参考記事:「南極の棚氷が危ない、「両面」攻撃の脅威、研究」

 しかし、南極大陸には毎年大量の雪が降っている。降った雪の上に次の雪が積もると、圧縮されて新しい氷となり、海による損失が補われる。

 氷の融解と補充の綱引きは、地球最大の氷床である南極氷床がどのくらいの速さで縮小し、海面上昇にどのくらい寄与するかを左右する。しかし、南極大陸には観測所も観測員も不足していて、全域の降雪量を測定するのは非常に困難だ。

 そこで研究者たちは、アイスサット2を使って気象観測の空白を埋めようとしている。この衛星は、氷の表面にレーザーパルスを照射し、個々の光子が戻ってくるのに要する時間を測ることで、氷床の高さの変化をわずか4mmという高い精度で測定することができる。

次ページ:西南極氷床の高さが大きく増加していた

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