独自のレーベル「オールアイスレコーズ」を立ち上げたアイスミュージックの先駆者テリエ・イースングセット氏。カナダのバフィン島でレコーディングをしているところ。この日の気温はマイナス42℃。(PHOTOGRAPH BY EMILE HOLBA)
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 石や木といった自然の素材を使って曲を作っていたテリエ・イースングセット氏にとって、氷への挑戦は自然ななりゆきだった。

 ノルウェーの作曲家でパーカッショニストであるイースングセット氏は、氷から生み出される「アイスミュージック」の先駆者だ。日本ではアパレルブランドのCMに起用されたことがあり、たびたび来日もしているので、見聞きしたことがある人もいるだろう。

 アイスミュージックとは、自然にできた氷を叩いたり、氷から作った楽器を演奏したりして生み出される音楽のこと。楽器の多くは馴染み深い形をしているが、アイスミュージックの場合、主役となるのは自然であり、自然によって生み出される予測できない音は一つや二つではない。楽器の制作も演奏も、完全にはコントロールできないプロセスであり、それこそがこの芸術の魅力を一層高めている。

 アイスミュージックという芸術の形を、イースングセット氏は自身のライフワークだととらえている。

「初めて透明な氷で演奏をしたときに、わたしはその純粋な音が、驚くほどあたたかくてやさしいことに気が付きました。それに比べると、足の下で氷が砕かれる音は非常に冷たいのです」

2020年2月、ハルダンゲル氷河付近のフィンセ村で行われたアイスミュージック・フェスティバル・ノルウェーがクライマックスを迎える。(PHOTOGRAPH BY EMILE HOLBA)
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 2000年、リレハンメルにある凍った滝の内側で、氏は世界初となるアイスミュージックのコンサートを開催し、6年後には年に一度開催される「アイスミュージック・フェスティバル・ノルウェー」を立ち上げた。この祭典には、氷点下の寒さをものともせずに、音楽を通じて自然との絆を深めるユニークな試みを体験しようという好奇心旺盛な人々が集まってくる(2021年のフェスティバルはパンデミックのため中止となったが、3月14日にコンサートのライブ配信が予定されている)。

 イースングセット氏はこれまでに、2017年のノーベル賞晩餐会での演奏も含めて、アイスミュージックのコンサートを数百回行っているほか、自身のレーベルである「オールアイスレコーズ」で8枚のアルバムを制作している。

次ページ:楽器の制作と演奏の動画

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