ジーロフトから出土した緑泥石の工芸品。足にひづめのある人間が、左右にサソリを従え、2頭のチーターの尾をつかむ姿が表現されている。(PEJMAN AKBARZADEH/PERSIAN DUTCH NETWORK)

 2001年、骨董品市場に突然、大量の考古学的遺物が売られはじめた。独特な宝石や、武器、精巧な作りの陶器、酒器、ゲームボードなど、いずれも芸術性が非常に高く、カーネリアン(紅玉髄)とラピスラズリの見事な象眼細工が施されていた。

 作品には、動物が象徴的に表現されており、動物どうしや人間との戦いも描かれていたが、常に人間が勝利していた。動物たちが広大なヤシの木立の中で草をはむ牧歌的な風景や、寺院や宮殿などを描いた作品もあった。

 謎の工芸品に関するデータは競売会社からはほとんど提供されず、しばしば「中央アジアで出土」とだけ説明されていた。当初はプロの作った偽造品と思われていたが、その後も出品は続き、学者たちは、自分たちが知らない遺跡から出土した本物の遺物ではないかと考えるようになった。

 2002年、イラン警察がその謎を解いた。数人の密売人を逮捕し、大量の工芸品を押収したのだ。その大半が、イラン南東部のジーロフトという地方都市から40kmほど南のハリル川渓谷で盗掘された遺物だった。(参考記事:「特集:追憶のペルシャ 2008年8月号」

 盗掘のきっかけは2001年初めの洪水だった。ハリル川が氾濫して周辺の土地が浸食されたことで、古代の共同墓地の遺跡が露出したのだ。地元の人々や盗掘者たちは遺物の価値をいち早く見抜き、収集と販売にのり出したというわけである。

ジーロフト文化(紀元前3千年紀中期)の石のおもりには、獰猛な動物を手なずける神話の英雄という、青銅器時代によく見られるモチーフが描かれている。イラン国立博物館(テヘラン)収蔵。(FRANS LANTING/NATIONAL GEOGRAPHIC)
ジーロフトでは、こうした南京錠のような形をした工芸品が多数発見されている。「おもり」と呼ばれることもあるが、用途ははっきりしない。アゼルバイジャン博物館(イラン、タブリーズ)収蔵。(IVAN VDOVIN/ALAMY)

 考古学者の正式な調査により、この共同墓地は、今から5000年近く前の青銅器時代にさかのぼる未知の文化のものであることが明らかになった。盗掘者たちはすでに数千の墓を物色し、遺物を奪っていたが、考古学者たちは残された部分の調査を行うことにした。露出した遺跡をできるだけ保全し、かつてこの地にあった古代文化とそこで暮らした人々のことをより詳しく明らかにしようと、世界各地の大学から考古学者が発掘チームに加わって取り組んでいる。

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