新型コロナ治療薬、新たな有力候補が急浮上

関節リウマチ薬の有効性を示す結果相次ぐ、重症度に合った投薬の必要性も

2021.02.26
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ケニア南部のマチャコスにある新型コロナ患者用隔離治療センターの集中治療室(ICU)で患者を支える医療スタッフ。2020年11月3日撮影。(PHOTOGRAPH BY BRIAN INGANGA, AP)
[画像のクリックで拡大表示]

 新型コロナウイルスとの闘いも1年を過ぎたが、医療機関は今も迅速で簡単な治療法がないという問題に直面している。

「特効薬がないことは驚きではありません」と米クリーブランド・クリニックのアダーシュ・ビムラージ氏は言う。氏は米感染症学会(IDSA)が作成した新型コロナ治療ガイドラインの主要な著者の一人だ。「この数十年から数百年に出会った呼吸器系ウイルス感染症のいずれにも、特効薬はありませんでしたから」

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療は、少しずつ進歩している。医療現場では、他のウイルス向けに開発された薬と、重症患者の治療には安全性と有効性が確認された抗炎症効果のあるステロイド剤などを組み合わせて使用している。

 だが、この数カ月間に実施された臨床試験の結果、新たな治療薬の候補がいくつか浮上した。単独投与での効果は高くないものの、複数の治療法を併用すると効果が発揮されるという。こうした併用アプローチは、長年の研究を経て他の疾患で大きな成果を上げてきた。

「心臓発作の治療法を考えてみてください。ステント(血管を広げる金具)、アスピリン、血液抗凝固薬、血圧治療薬、スタチン(コレステロール値を下げる薬)などがありますが、そのひとつひとつは死亡のリスクを少しずつ減らしているだけなのです」。英オックスフォード大学の心臓専門医マーティン・ランドレー氏はこう説明する。氏は世界最大規模の新型コロナ治療薬試験である英国の「COVID-19治療無作為化評価(通称RECOVERY)」試験で共同研究主任を務めている。(参考記事:「わかり始めた「命を救える」新型コロナの治療法」

関節リウマチ薬が有力候補に

 現在、新型コロナ感染症で有効性が広く認められている薬は2つしかない。ひとつは、高価な抗ウイルス薬のレムデシビル。ウイルスの増殖を阻害し、入院期間を短縮できるが、致死リスクを低下させる効果はないとみられている。

 もうひとつは、低価格のステロイド剤のデキサメタゾン。新型コロナ重症患者の致死リスクを低下させることが確認された唯一の治療薬だ。「間違いなくステロイドは有効だと考えられています」とビムラージ氏は言う。

 だが、安全でより有効な治療法が新たに発見される日は近いかもしれない。ビムラージ氏をはじめとするIDSAの研究者たちが数十の治療法を検討するなかで、ビムラージ氏が特に期待している薬がふたつある。

次ページ:2つの大規模試験で有効性が明らかに

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

2021年2月号

ウイルスの世界/新天地を目指す女性たち/コスタリカ 野生の楽園/モニュメントは何のため?

2月号の特集「私たちはウイルスの世界に生きている」では、時には人々の生命を奪うウイルスが、生物の進化で果たしてきた役割について取り上げます。「コスタリカ 野生の楽園」はコロナ禍で保護活動が危機に直面している現地の状況をレポート。このほか、「新天地を目指す女性たち」「モニュメントは何のため?」などの特集を掲載。

定価:1,210円(税込)

おすすめ関連書籍

ビジュアル パンデミック・マップ

伝染病の起源・拡大・根絶の歴史

ささいなきっかけで、ある日、爆発的に広がる。伝染病はどのように世界に広がり、いかに人類を蹂躙したのか。地図と図版とともにやさしく解き明かす。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:2,860円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加