実り豊かな「沼」とその生きものたち、沼地の大きな価値とは

絶滅の危機にある生物を育み、空気と水の浄化に貢献

2021.05.04
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米ワイオミング州グランド・ティートン国立公園のシュワバッハ・ランディングにすむビーバー。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 官僚主義を改革するという意味で「沼の水を抜く(drain the swamp)」という表現が使われるようになって久しい。沼には、よどんで悪臭を放つ不快な場所というイメージがつきまとっているからかもしれない。

 だが、実際の沼はとても実り豊かな場所だ。文明発祥の地とされる中東では、沼地が農業や人間社会に恵みをもたらした。

 米国大陸部で沼地を含め湿地が占める面積はわずか5%にすぎないが、「米国内の植物種の3分の1近く」、また絶滅の危機にある希少な動植物種の3分の1以上が湿地に生息していると、米アラバマ州にあるモンテバロ大学の生物学者マイク・ハーディグ氏はメールでの取材に対して説明している。

 それでは、沼とはいったい何なのだろう。どのような動物が生息し、どのようにして生物が暮らしやすい環境を提供しているのだろうか。

沼もいろいろ

 英語では「沼」を指す言葉がいくつかあるが、なかでも「沼の水を抜く」のswampは「樹木や低木などが生えていることを特徴とする」湿地のことだと、米フロリダ大学流域生態学研究室の博士課程に在籍するエリオット・ホワイト・ジュニア氏は説明する。氏はメキシコ湾北岸一帯の沼地を調査している(編注:主に草が生える沼地をmarshという。この記事の「沼地」はswampを指す)。

 伐採や農地への転換をされることなく歳月を経た沼地は、「高くそびえた木々が、大きな教会の円柱のように広い間隔を空けて並んでいるので、大聖堂のような雰囲気を感じることがあります」と氏は話す。

ヨーロッパに生息するルリボシヤンマ属のサザン・ホーカー(Aeshna cyanea)の若いメスがヨシの葉に止まっている。(PHOTOGRAPH BY CISCA CASTELIJNS, MINDEN PICTURES/NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 フロリダ州のマナティースプリングス州立公園にある沼地などに分け入ると、よく晴れた日でもひんやりとして薄暗いという。

 薄暗く、気味悪く、近寄りがたいことが、沼地の豊かな恵みが見過ごされてきた一因のようだ。

クマの避難所

 ルイジアナ州のアメリカクロクマは「以前、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種(threatened)に指定されたことがあります」とホワイト氏は話す。だが沼地が回復すると、個体数も持ち直したという。

草地を行くアメリカクロクマ(Ursus americanus)の母と子。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE GEORGE, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 沼地では「クマはのびのびと歩き回れます。道路を横断したり人間と危険な出会い方をすることもありません」

 同様にシカやカモも、ハンターが来ない沼地ではのんびりと過ごすことができる。

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