絶滅危惧種シマフクロウ、ロシアでも危機の原因は

世界最大級のフクロウ、残るは北海道を含めて全1000~1900羽

2021.02.13
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警戒し、耳羽を逆立てて今にも飛び立とうとするメスのシマフクロウ。2008年3月。(Photograph by Jonathan C. Slaght)
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 極東ロシアの森の奥、倒木に腰かけたラダ・サマック氏は、フクロウの鳴き声が聞こえるのを待っていた。

 たそがれ時になって、とうとうその声が聞こえた。絶滅危惧種、シマフクロウの二重唱だ。

 耳に残るこの二重唱は、つがいの絆を深める役割を果たしており、長いときには2時間も続く。まるでオスの「ここにいるよ」という呼びかけに、メスが一段低い声で「私もここよ」と答えているかのようだ。

 シマフクロウは、翼を広げた幅が1.8メートルにもなる、世界最大級のフクロウだ。濃い黄色の目と目立つ羽角で知られるこの猛禽類は、極東ロシアから北海道にかけて生息し、老齢樹のうろに巣を作る。

 シマフクロウの英名Blakiston's fish owlや学名Bubo blakistoniは、19世紀の英国の博物学者、トーマス・W・ブラキストンにちなんで付けられた。2つの亜種があり、Bubo blakistoni doerriesiはロシアとおそらく中国北東部に分布し、Bubo blakistoni blakistoniは北海道から千島列島南部にかけて生息する(元来、シマフクロウはBubo blakistoni blakistoniを指す名だが、この記事ではBubo blakistoniを指して使う)。

 北海道ではシマフクロウの保護のために給餌や巣箱の設置が行われており、個体群の管理がされている。ロシア沿海地方に残る200に満たないつがいは、完全に野生の状態だ。世界全体での個体数は、1000から1900と見積もられている。

 サマック氏は、ウラジオストクにあるロシア連邦科学センター東アジア陸生生物多様性研究所の研究者だ。飼育繁殖されたシマフクロウを、ロシア沿海地方南部のヒョウの森国立公園に戻す長期保護計画を立てている。比較的開発が進んだこの地域にも、かつてはシマフクロウが生息していた。

 シベリアトラ(アムールトラとも呼ばれる)と同様に、シマフクロウも希少種の保護を啓発するためのシンボルになりうると、サマック氏は信じている。

「世界最大のフクロウが私たちの森に生息しているのだと説明すると、聞いた人は目を輝かせます」

2つの脅威

 シマフクロウは、大きく2つの脅威に直面している。生息地の喪失と、気候変動の影響だ。

 この鳥は、冬の間は凍り付いた川でサケ、マス、ヤツメウナギなどを捕る。春が来ると、オスはメスや幼鳥のために両生類も捕まえる。

 気候変動によって春の訪れがずれると、カエルが姿を現すタイミングもずれてしまい、シマフクロウがひなを育てるのに十分なエサを確保できなくなるおそれがある。このような時期のずれは「栄養段階のミスマッチ」と呼ばれ、悲惨な結果を招くと、野生生物保護学会のロシア・北東アジア調整役を務めるジョナサン・C・スラート氏は懸念する。

 太平洋の海面温度の上昇に伴い、近年ではロシア沿海地方も暴風雨や台風に襲われることが増えた。たとえば2016年の台風10号は、原生林に甚大な被害を及ぼした。これらもフクロウの営巣地や生息地にとって潜在的な脅威になっていると、スラート氏は言う。

次ページ:シマフクロウにとって最大の問題は

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