欧米ではイースター(復活祭)に、ウサギがシンボルになる。いわゆる「イースター・バニー」だ。
だが、外来種のウサギが大繁殖して生態系が大いに乱された歴史をもつオーストラリアでは、ウサギをもてはやすかわりにミミナガバンディクート(学名:Macrotis lagotis)に注目を集めようとしている。(参考記事:「24匹が8億匹に! ウサギで豪大陸を侵略した英国人」)
オーストラリアの固有種であるミミナガバンディクートは、ビルビーやフクロウサギとも呼ばれる耳の長い有袋類で、砂漠に巣穴を掘って暮らす。かつてはオーストラリア大陸の80%以上の地域に生息していた。(参考記事:「絶滅寸前の有袋類、化石の地への移住で保護へ、豪」)
しかし、生息地の喪失や外来種の影響で、この数十年減少を続け、今では西オーストラリア州、クイーンズランド州、ノーザンテリトリーの一部に生息するのみとなった。国際自然保護連合(IUCN)とオーストラリア政府は、ミミナガバンディクートを危急種(vulnerable)に指定している。(参考記事:「絶滅危惧種タスマニアデビルが豪本土に復帰、3000年ぶり」)
そこで「Foundation for Rabbit-Free Australia」や「Save the Bilby Fund」といった保護団体は、キリスト教の復活祭を象徴するキャラクターとして「イースター・バニー」ならぬ「イースター・ビルビー」のイメージを広めることで、ミミナガバンディクートの窮状について国民の関心を高める活動を行ってきた。
イースター・ビルビー・チョコレートが大量に生産されるなど、このキャンペーンは多くの成功を収めている。だが、ミミナガバンディクートを守るべきさらなる理由があると、マードック大学の動物学者スチュアート・ドーソン氏は言う。
2019年3月にドーソン氏が学術誌「Journal of Zoology」に発表した論文によると、ミミナガバンディクートが作るらせん状の深い巣穴は、オオトカゲや猛毒のヘビを含む、少なくとも45種の生物の避難所になっているというのだ。ドーソン氏の主張によれば、ミミナガバンディクートが減り続けると、その巣穴に避難してくる多くの種の生存が危うくなる可能性がある。
ミミナガバンディクートがもたらす恩恵
ミミナガバンディクートが暮らすのは、オーストラリア内陸部の荒野。気温は40℃に達することもあり、森林火災が定期的に発生する。彼らは、ほとんどの時間を深さ2メートルほどの巣穴で過ごすことで、こうした極端な環境から身を守る。
ミミナガバンディクートは、ほぼ真っ平らで何もない地形に穴を掘ることで動物たちのオアシスを作っていると、ドーソン氏は言う。
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