南アフリカ共和国が誇る「宝石」とも言われるクルーガー国立公園。そこに暮らすサイが苦境に陥っている。
クルーガーを含む19の主要な国立公園を管理する南アフリカ国立公園局(SANパークス)が発表した最新の評価によれば、クルーガーに暮らすサイの数は過去10年間に約70%減少しているというのだ。主な原因は密猟で、その結果、繁殖や子の生存に影響が出ている。(参考記事:「2016年10月号 血に染まるサイの角」)
クルーガー国立公園に暮らすサイの数は4000頭を切った。四角い唇で草を食べるシロサイが3549頭、とがった唇で木の葉や果物をむしり取るクロサイが268頭だ。2010年には1万~1万3000頭がいた。野生のサイは全世界に1万8000頭ほどいると推測されており、クルーガーのサイが20%以上を占めている。(参考記事:「絶滅寸前のサイ、マレーシア最後の1頭が死亡」)
南アフリカのNPOプロジェクト・ライノの保全大使を務めるグラント・フォールズ氏は「これらの喪失は間違いなく憂慮すべきことですが、しばらく前から、クルーガーのサイが減少していることはわかっていました。今回、それが公式に発表されたということです」と話す。
野生生物の保全状況を評価している国際自然保護連合(IUCN)の一員として、アフリカのサイの専門部会を率いるマイケル・ナイト氏は、メスの密猟は特に損失が大きいと指摘する。サイのメスは生涯に10頭の子を産める。しかし多くの場合、母親がいないと、子は生き延びられない。
サイの角は米国へも流れてはいるが、圧倒的に多いのは中国やベトナムで、伝統薬や彫刻の材料として取引されている。SANパークスによれば、2万平方キロ近い面積を誇るクルーガーは長年、南アフリカにおけるサイの密猟の中心地となってきた。
クルーガーにおけるサイの密猟は2014年に急増し、800頭以上が角のために命を奪われた。しかし、近年は密猟で命を落とすサイは減少している。
ナイト氏によると、2015〜16年は、干ばつによってサイが減ったという。繁殖自体が減り、さらに子が生まれても、母親が脱水状態で母乳が少なくなり、栄養不良の子が命を落とした。干ばつの間は餌も減少し、特にシロサイは草不足に苦しめられた。南アフリカ環境林業漁業省によれば、シロサイの死亡率は通常の2倍に達した。
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