10年間で70%減少 南ア、世界最大のサイの個体群どう救う?

南アフリカ、クルーガー国立公園に暮らすサイが密猟、汚職、干ばつによって窮地に

2021.02.08
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南アフリカの民間保護区に暮らすサイの多くは角を切り取られている。密猟者に命を奪われる確率を減らすためだ。しかし、角は数年たてば再び生えてくるため、金銭的な余裕がない公営の公園にとっては現実的ではない。写真は故ジョン・ヒュームの野生動物牧場で飼育されているサイ。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)
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 南アフリカ共和国が誇る「宝石」とも言われるクルーガー国立公園。そこに暮らすサイが苦境に陥っている。

 クルーガーを含む19の主要な国立公園を管理する南アフリカ国立公園局(SANパークス)が発表した最新の評価によれば、クルーガーに暮らすサイの数は過去10年間に約70%減少しているというのだ。主な原因は密猟で、その結果、繁殖や子の生存に影響が出ている。(参考記事:「2016年10月号 血に染まるサイの角」

 クルーガー国立公園に暮らすサイの数は4000頭を切った。四角い唇で草を食べるシロサイが3549頭、とがった唇で木の葉や果物をむしり取るクロサイが268頭だ。2010年には1万~1万3000頭がいた。野生のサイは全世界に1万8000頭ほどいると推測されており、クルーガーのサイが20%以上を占めている。(参考記事:「絶滅寸前のサイ、マレーシア最後の1頭が死亡」

 南アフリカのNPOプロジェクト・ライノの保全大使を務めるグラント・フォールズ氏は「これらの喪失は間違いなく憂慮すべきことですが、しばらく前から、クルーガーのサイが減少していることはわかっていました。今回、それが公式に発表されたということです」と話す。

 野生生物の保全状況を評価している国際自然保護連合(IUCN)の一員として、アフリカのサイの専門部会を率いるマイケル・ナイト氏は、メスの密猟は特に損失が大きいと指摘する。サイのメスは生涯に10頭の子を産める。しかし多くの場合、母親がいないと、子は生き延びられない。

 サイの角は米国へも流れてはいるが、圧倒的に多いのは中国やベトナムで、伝統薬や彫刻の材料として取引されている。SANパークスによれば、2万平方キロ近い面積を誇るクルーガーは長年、南アフリカにおけるサイの密猟の中心地となってきた。

 クルーガーにおけるサイの密猟は2014年に急増し、800頭以上が角のために命を奪われた。しかし、近年は密猟で命を落とすサイは減少している。

 ナイト氏によると、2015〜16年は、干ばつによってサイが減ったという。繁殖自体が減り、さらに子が生まれても、母親が脱水状態で母乳が少なくなり、栄養不良の子が命を落とした。干ばつの間は餌も減少し、特にシロサイは草不足に苦しめられた。南アフリカ環境林業漁業省によれば、シロサイの死亡率は通常の2倍に達した。

参考ギャラリー:世界最大の「サイ牧場」を撮影 写真10点(画像クリックでギャラリーページへ)
2015年10月、南アフリカ北西州クラークスドープ――ヒューム氏の土地で放牧されるサイ。ヒューム氏は世界最大のサイ牧場のオーナーで、1160頭以上のサイを飼っている。年間200頭のサイを繁殖させる目標があるが、今のところわずかに届いていない。(PHOTOGRAPH BY DAVID CHANCELLOR, KIOSK)

次ページ:サイを救う秘策はある

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