人にもできる! 音で周囲を知覚する「反響定位」のしくみ

コウモリやイルカをはじめ多くの動物が駆使、訓練すれば人間も

2021.02.09
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カナダのブリティッシュコロンビア州の近海で、海面のすぐ下を泳ぐセミイルカ。音が空気中の5倍の速さで伝わる海では、反響定位を用いるのは理にかなった戦略だ。(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 自分が出した音が物に当たって跳ね返ってくる反響を利用して、距離や物の大きさを知る動物がいる。いわば、自然が編み出したソナーシステムの「反響定位(エコーロケーション)」という知覚の方法だ。

 コウモリの大半の種、ハクジラ全種、小型哺乳類など、1000種以上の動物が反響定位を用いる。多くが夜行性か、地中に掘った穴や海中にすむ動物で、光が乏しい環境で餌を見つけるために反響定位を利用している。音波を発する方法は、のどを振動させる、羽ばたきをするなど、いくつか存在する。

 例えば、夜行性のアブラヨタカや、暗い洞窟の中で狩りをする一部のアナツバメは「鳴管(めいかん)という発声器官で短いクリック音を出しています」と米ジョンズ・ホプキンズ大学の心理学・脳科学科の博士研究員ケイト・アレン氏は説明する。

 人間でも舌打ちの音を利用して反響定位ができる人がいるが、同様の行動は、テンレック(トガリネズミに似たマダガスカル原産の哺乳類)や、ベトナムに生息するほぼ盲目のホソオトゲヤマネの仲間(Typhlomys chapensis)など、ごく少数の動物でしか見られない。

人の髪の毛ほどの糸も感知するコウモリ

 反響定位を利用する動物の典型例といえばコウモリだ。コウモリは、生まれつき備わっているソナーを駆使して、夜間に高速で飛ぶ獲物を追いかける。(参考記事:「コウモリは暗闇でどうやって獲物を見つけるのか?」

 アレン氏によると、小さなドーベントンコウモリをはじめ大半のコウモリは、喉頭の筋肉を収縮させて、人間の可聴範囲を超える音(超音波)を出すという。ヒトでいう叫び声のようなものだ。

 コウモリの「鳴き声」は種によって大きく異なり、近くに他種のコウモリがいても仲間の声を聞き分けることができる。また、環境や獲物の種類によっても使い分けている。ヨーロッパチチブコウモリは、近くにガがいるときには、気づかれないように「ささやき声」を発する。(参考記事:「小さな“声”で獲物に近づくコウモリ」

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 しかしある種のガは、コウモリの反響定位に対する独自の防御手段を進化させている。ヒトリガは、胸部の両側にある振動膜を収縮させてクリック音を出し、コウモリのソナーをかく乱する。(参考記事:「コウモリを錯覚させて逃げるガ、進化の謎を解明」

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