指先に乗る超小型の新種カメレオン、世界最小の爬虫類か

脊椎動物はどこまで小さくなれるのか、すでに絶滅を危惧する声も

2021.02.03
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【動画】カメレオンはどうやって色を変える?
最近の研究では、カメレオンが科学者たちの予想と全く異なる方法で体色を変えていることが示唆されている。ナショナル ジオグラフィックが支援する映像作家ジェイソン・ジャアクス氏は、皮膚の上層に含まれるナノ結晶が体色変化の鍵を握ると説明している。(解説は英語です)

 まだ2体しか見つかっていないので、この種の全体像をとらえるのは難しい。人によって身長が異なるように、同じ種の別の個体がもっと大きかったり小さかったりするかもしれない。実際、これと同じ科に属するカメレオンは、オスよりもメスが大きくなる傾向がある。

 さらに、シェルツ氏によると、ここまで小さな動物だと、本当に成熟しているのかを判断するのも難しいという。ただし、メスの個体をマイクロCTスキャンにかけたところ、卵巣に成熟の過程にある卵細胞を確認できた。「そのときは階段を駆け上がって、『やった、確認できた』と大喜びしました」とシェルツ氏は振り返った。

 それよりも難しかったのは、オスのカメレオンの年齢だ。これを判別するためには、生殖器を詳しく調べる必要があった。若い個体では、半陰茎と呼ばれるオスの生殖器がなめらかな風船のようになっているが、成長するにつれて複雑な形状になる。見つかったオスの半陰茎は明らかに「なめらかな風船」ではなかったので、シェルツ氏は若い個体ではないだろうと考えている。ちなみに、このカメレオンはもっと大きな他のカメレオンに比べて、体の割に生殖器が大きいという。

 米マーケット大学で小型のヤモリについて研究している進化生物学者のトニー・ギャンブル氏(今回の研究とは無関係)は、「メスはもちろんおとなですが、オスもおそらくおとなでしょう」と述べている。

小型化の限界の理由

 新種カメレオンの発見で注目が集まっているのは、そのキュートさだけではない。どこまで小さな脊椎動物が存在するのかに関して、さまざまな疑問が投げかけられている。

 たとえば、Brookesia nanaは最小の鳥や最小の哺乳類よりもずっと小さい。ただし、これよりも小さいカエルは存在する。(参考記事:「新種の極小カエルを発見 ホチキスの針サイズ」

 とはいえ、どこかに爬虫類のサイズの下限があるはずだ。ギャンブル氏によると、この問題には体の表面積が密接に関係している。一般的に小さな動物ほど、体の体積に対する表面積の割合は大きい。この割合が大きければ、体の水分が失われやすくなる。

 さらに「臓器や器官を格納する場所にも限界があるはずです」とギャンブル氏は言う。小さな動物の多くは進化の過程で、頭蓋骨が小さくなったり、骨が重なり合う構造になったりする。ある構造が完全になくなってしまう場合もある。「何も捨てずに、大きな家から小さな部屋に引っ越したらどうなるでしょうか。どこかに詰めこまなければならないのですから、限界はあるでしょう」

ギャラリー:色でおしゃべり カメレオン(写真クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:色でおしゃべり カメレオン(写真クリックでギャラリーページへ)
カルンマカメレオン属の一匹が、昆虫を捕まえた瞬間。優れた視力をもち、長い舌をピンポイントの精度で繰り出すことができる。(Photograph by Christian Ziegler)

すでに絶滅の危機か

 残念なことに、この超小型カメレオンの未来は明るくない。ラコトアリソン氏によると、カメレオンが見つかった山林でも深刻な環境破壊が進んでいるという。(参考記事:「絶滅の危機、新種ミニカメレオン」

 シェルツ氏も、この地域の人々には米や肉を買う余裕がないと話す。貧困と人口増加により、農地や家畜の場所を確保するために熱帯雨林の伐採が進んでいる。米航空宇宙局(NASA)によると、マダガスカルでは、以前森だった場所の約94%に森林破壊の影響が及んでいる。

 新種のカメレオンは、生息地が狭いうえ、その生息地も脅かされている。そのため、ほぼ確実に国際自然保護連合(IUCN)の近絶滅種に指定されることになるだろう。朗報は、マダガスカルが最近ソラタ山塊を新たに保護区域に含めたことだ。

 シェルツ氏はこう話す。「『森林伐採をやめてほしい』と言うのは簡単ですが、マダガスカルの経済的展望が変わるまでは、野生生物にとっての希望はありません。人は食べなければならないのですから」

 ギャンブル氏は、マダガスカルで新種が発見されるたびに、科学者も一般人も、この島には非常に多様な生物が生息していることを思い出すと言う。「このような生物が発見されるたびに、私たちは『生物はもっと小さくなるのかもしれない』と思って興味をかき立てられるのです」

参考ギャラリー:モザンビーク驚異の昆虫たち(両生爬虫類も) 写真15点(写真クリックでギャラリーページへ)
参考ギャラリー:モザンビーク驚異の昆虫たち(両生爬虫類も) 写真15点(写真クリックでギャラリーページへ)
餌の昆虫を探してやぶを登るディレピスカメレオン(学名Chamaeleo dilepis)。モザンビーク、ゴロンゴーザ国立公園で。(PHOTOGRAPH BY JEN GUYTON)

会員向け記事を春の登録キャンペーンで開放中です。
会員登録(無料で、最新記事などメールでお届けします。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

文=JASON BITTEL/訳=鈴木和博

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 消えゆく動物

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

今まさに、地球から消えた動物がいるかもしれない。「フォト・アーク」シリーズ第3弾写真集。 〔日本版25周年記念出版〕 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:3,960円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加