米国でコロナウイルスワクチンの配布を加速させることを約束しているバイデン政権は、じきに新たなツールを手に入れる。それは、接種が1回で済み、一般的な冷蔵庫の中で3カ月保存可能なワクチンだ。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)社は先日、同社が開発したワクチン候補が、1回の接種でCOVID-19に対し強力な予防効果を発揮したというデータを公表した。接種者の発症を予防する割合である有効率は全体で66%で、重症疾患の予防効果は85%にのぼるという(編注:日本では2020年9月から治験を実施中)。
ただし、留意すべき点が2つある。このワクチン候補の有効率は米国内で72%であり、ファイザー・ビオンテック社およびモデルナ社の2回接種ワクチンの有効率95%には及ばない。
また、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン候補は、南アフリカの治験では有効率がわずか57%と、免疫を付与する効果が低かった。
南アフリカで発見されている一連の変異株は、世界のパンデミックによる死者数の増加を加速させる恐れがある。ファイザー・ビオンテックとモデルナも、自社のワクチンについて同様の懸念を報告しており、コロナウイルスの新たな変異株が自社のワクチンを出し抜いた場合に備えて、異なる投与方法や処方戦略の研究を進めている。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン候補は、早ければ2月の第一週にも米食品医薬品局(FDA)による緊急使用承認のための審査にかけられるとみられている。承認されれば、1回の接種で済むこのワクチンは、散漫で進行が遅いとこれまで批判されてきたCOVID-19ワクチン投与作戦を効率的に進めるきっかけになるだろうと専門家は言う。現状、ファイザー・ビオンテックとモデルナのワクチンは、数週間の間隔を空けて2回接種しなければならない。
「単回投与であるこのワクチンは、状況を大きく変えるゲームチェンジャーになる可能性があります」と、米ニューヨーク市立大学公衆衛生大学院の保健政策・経営学教授で、医薬品のサプライチェーンを研究するブルース・Y・リー氏は言う。
「このワクチンの方が運用が簡単です。2回接種の場合は、人々に2回目の投与のためにもう一度足を運んでもらわなければなりません。また単回投与のワクチンは製造も簡単です。半分の量で済みますから」
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