新型コロナウイルス(青)に感染して死につつある細胞(緑)の顕微鏡画像。画像は着色してある。(IMAGE BY NIAID IRF)
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 新型コロナウイルスの感染が拡大し、外出自粛、イベントの中止、バーチャル会議の日々が始まって早1年。コロナ疲れがたまり、安全対策が緩みがちな人が増えた。その一方で、3種類の変異株が出現し、速いペースで全世界に広がっている。感染拡大の速さは、ウイルスの感染性(伝播のしやすさ)が高まっていることを示唆する。

 科学者たちは現在、各変異株がもつ変異の組み合わせが、どのような仕組みで感染拡大に影響を与えているのかを解明しようとしている。こうした研究は、現在流行しているウイルス系統の危険性を理解し、将来の変異株がパンデミック(世界的大流行)の推移に及ぼす影響を予測するために不可欠だ。

「世界の多くの地域では、ウイルスの拡大を抑制できていません」と米ミシガン大学の感染症内科医でウイルス学者のアダム・ローリング氏は言う。「つまり、ウイルスは進化する機会をたっぷり与えられているのです」

 感染者が増えれば死者や後遺症に苦しむ人が増えることになるが、聞こえてくるのは悪いニュースばかりではない。例えば、新型コロナワクチンは変異株に対しても一定の効果があることが、最新の研究で示されている。ワクチン接種を受けるまでは、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの保持、手洗い、換気、密を避けるなど、これまでと同様の感染対策がさらに重要になる。(参考記事:「なぜ変異株にもコロナワクチンは効くのか、その根拠とは」

「変異株はより伝播しやすいかもしれませんが、基本的な仕組みは同じです」と英セントアンドリューズ大学の感染症内科医ミュゲ・チェビキ氏は言う。

3つの異なる変異株に共通する「N501Y」

 ウイルスは宿主の細胞の働きを乗っ取り、自分自身のコピーを作らせて増殖する。しかし、同じ文章を繰り返し入力するときにタイプミスをするように、遺伝子のコピーを繰り返すと小さな間違い、つまり変異が蓄積されていく。変異の多くはウイルスの機能に影響せず、なかには増殖能力を損なうものさえあるが、なかには感染や増殖に有利に働いて、地域の他の株を駆逐して感染者を急増させることもある。

 英国、ブラジル、南アフリカでは、まさにこれが起こったようだ。英国では「B.1.1.7系統」の変異株(20I/501Y.V1、VOC-202012/01)が、1月の記録的な感染急増を引き起こしたと見られている。この変異株は現在、米国を含む60カ国以上に広がっており、3月中旬までに米国で最も一般的なウイルス株になると予測されている。

 これとは別に生じた「P.1系統」は、ブラジルのアマゾンで感染者を急増させ、マナウスでは2020年12月の感染者の約4割がこの変異株に感染していた。3つめの「B.1.351系統」の変異株(501Y.V2)は、同じく12月に南アフリカで感染が拡大したときに初めて発見された。

次ページ:結合能力、増殖量、免疫の回避など要因はさまざま

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