すべての道はローマに通ず 帝国の枠組みを作った32万キロの街道

古代世界の物流と軍事活動を支えた巨大ネットワークと、それを支えた建設技術の数々

2021.02.07
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ローマ神話の神メルクリウスは、商人、金融業者、旅人の庇護者。写真は紀元前4世紀の青銅の像。パリ、ルーブル美術館所蔵。(ERICH LESSING/ALBUM)
ローマ神話の神メルクリウスは、商人、金融業者、旅人の庇護者。写真は紀元前4世紀の青銅の像。パリ、ルーブル美術館所蔵。(ERICH LESSING/ALBUM)

 丘陵地帯では、アップダウンを少なくするために、切通しや橋を作った。山を通る道は大きなカーブを描き、地形に合わせて傾斜が均一になるよう気を使った。高山地域では、急カーブやトンネルを作ることもあった。道路は、日光がよく当たる東側や南側の斜面に作られることが多かった。冬に雪が降っても、早く解けて通行を再開できるようにするためだ。

 建設の委託は、民間の請負業者が参加できる公開入札によって決められた。工事には労働者を雇ったが、奴隷や強制労働の刑に服役する受刑者を使うこともあった。軍のエンジニアが設計や現場の指揮に当たることもあり、軍事作戦の一環として道路が必要な場合や、征服した領土では、兵士が工事に駆り出された。

 材料は近くの採石場から運ばれたが、採石場がない場合は外国から輸入された。道を造る前に、木を切り倒し、岩などの障害物を撤去する。次に土壌を排水し、雨水を迂回させるための水路を作る。道路に溝を掘って、大きな石を並べる。水はけをよくするために、石は隙間を開けて置かれた。その上に中サイズの石を並べることで大きな隙間を埋め、さらにその上に砂と砂利を敷き詰めた。

 こうすると、表面が滑らかになって馬車が通りやすくなる。また、何層にも石を重ねることで、道路は周囲の地形よりも高くなる。それをさらに締め固めるために、水と大きな石のローラー、「タンパ」と呼ばれる専用の道具を使ってならした。道の両側には縁石が置かれ、その横に、雨水を排水するための側溝が掘られた。

 最後に、マイルストーン(里程標)として円筒形の石柱を、街道の1ローママイル(1000歩、約1.5キロ)ごとに配置した。高さ2.4メートルのマイルストーンには、距離を示す数字や、建設に貢献した人物の名前が刻まれていた。

 当時の建設技術は、18世紀に入ってから再び採用されるほどに優れていたため、どこの部分が古代ローマ時代に作られた道なのか見分けがつかないことすらある。古代の兵士、百姓、商人は「カリガ」と呼ばれるサンダルを履いていた。靴底には、皮を保護するために鋲が打ち込まれていたが、この鋲が抜け落ちて、道路に刺さることがよくあった。現代の考古学者は、この鋲を頼りにローマ時代の遺跡を探すという。

ギャラリー:32万キロに及ぶ道 ローマ帝国がつくった巨大ネットワーク 写真11点(画像クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:32万キロに及ぶ道 ローマ帝国がつくった巨大ネットワーク 写真11点(画像クリックでギャラリーページへ)
道路建設は、段階ごとに異なる種類の作業を必要とする。まず、障害物を取り除く。古代ローマの測量機器「グローマ」を使って、できるだけ直線になるようにルートを決める。 固い地盤に到達するまで土を掘り、そこに中サイズの石を敷き詰め、固い土台を作る。 その上に砂や小石を敷き詰めて、馬車や歩行者、動物が通りやすいように滑らかな表面を作る。都市部や地形が不安定な場所を通る道は、舗装用の石と縁石でさらに補強された。(FERNANDO AZNAR/BRIDGEMAN/ACI)

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文=JESÚS RODRÍGUEZ MORALES/訳=ルーバー荒井ハンナ

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