捕食性の環形動物、オニイソメ。成長すると体長3メートルにもなる。インドネシア、レンベ海峡で撮影。(PHOTOGRAPH FROM RYAN ROSSOTTO, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
捕食性の環形動物、オニイソメ。成長すると体長3メートルにもなる。インドネシア、レンベ海峡で撮影。(PHOTOGRAPH FROM RYAN ROSSOTTO, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 サンゴ礁周辺の海底の下には、巨大な襲撃者が隠れている。運のない魚が十分に近づくのを待ち伏せし、ギザギザの顎歯で素早く捕まえ、砂の巣穴に引きずり込む。あっという間の恐ろしい攻撃だ。その正体は、「サンドストライカー(砂地の襲撃者)」の異名を持つオニイソメだ。

 貪欲な巨大イソメは、約2000万年前にも、現在の台湾北部で無防備の魚を捕食していたようだ。その巣穴とみられる化石が複数の場所で新たに見つかり、1月21日付けで学術誌「Scientific Reports」に発表された。

 発見場所は台湾の野柳地質公園や八斗子岬だ。古代動物の活動の痕跡を留め、行動の手がかかりが得られるこうした貴重な化石は「生痕化石」と呼ばれる。今回の生痕化石は、長さ2メートル近く、直径約2~3センチの先史時代のチューブ状の巣穴で、論文によると、この地域が海に沈んでいた頃に生息していた生物が残した可能性が高い。

 現生のオニイソメは18世紀後半には知られていたものの、詳細な研究が始まったのは最近になってからだ。今回の化石は、獰猛な巨大イソメが太古の昔から海洋生態系の一部であった可能性が高いことを示しており、巧妙な狩りの技術が進化的に優れていることの裏付けになりそうだ。

古代のオニイソメの摂食行動と、Pennichus formosaeと名付けられた生痕化石の形成過程の仮説を示す3Dモデル。オニイソメはL字型の巣穴の中で待ち伏せして、巣穴の上を通る魚を強力な顎を使って捕まえる。巣穴の入り口は漏斗状に崩れ、その下の白い線は羽状に崩れた構造を示している。(COURTESY OF LUDVIG LÖWEMARK)
古代のオニイソメの摂食行動と、Pennichus formosaeと名付けられた生痕化石の形成過程の仮説を示す3Dモデル。オニイソメはL字型の巣穴の中で待ち伏せして、巣穴の上を通る魚を強力な顎を使って捕まえる。巣穴の入り口は漏斗状に崩れ、その下の白い線は羽状に崩れた構造を示している。(COURTESY OF LUDVIG LÖWEMARK)
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巣穴を作った古代生物の特定

 現生のオニイソメ(Eunice aphroditois)は環形動物の多毛類に属し、潮が引いた砂浜で小さな泡を出すゴカイと同じグループに属する。しかし、オニイソメは、海岸で見られる仲間よりもはるかに大きくなる。

 この究極の待ち伏せ型捕食者は、体長わずか数センチのものから3メートル近くになるものまでおり、極めて隠密性が高い。英ブルーリーフ水族館では2009年、水槽の魚が立て続けにいなくなることに困惑していたところ、魚の住処であるサンゴ礁を隅から隅まで調べると、オニイソメが1匹見つかったことがあった。

次ページ:巣穴の上部に生物が何度も出入りした痕跡

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