筆者が、スミス氏とシュミット氏に、最悪の組み合わせを質問したところ、2人とも「サシハリアリに鼻孔を刺されるのがおそらく最も痛い」と答えた。シュミット氏はサシハリアリに4点満点の評価を付け、「約7.5センチのくぎがかかとに刺さった状態で真っ赤な炭の上を歩く感じ」と解説している。
スミス氏が特定した最も痛い場所は、鼻孔と上唇で、陰茎の幹部がそれに続く。メディアでは、話題性からか陰茎を大きく取り上げたが、「本当に痛いのは鼻孔のほうですよ」とスミス氏は話す。ハチは目や口、鼻を狙うことが多いが、理にかなっているようだ。何しろ、これらは呼吸や視覚に不可欠な場所だ。「痛みには意味があります」とスミス氏。痛みは私たちが生体機能を守る動機になる。(参考記事:「股間にヤスデを擦りつけるキツネザル、薬代わり?」)
シュミット氏に言わせれば、もっと恐ろしいものがあるという。「スズメバチの一種ウォーリアーワスプに鼻か唇を刺されるのも最悪です」。そして、ある意味、サシハリアリ以上かもしれない。患部が腫れ上がり、それが何日も続くからだ。「腫れて赤くなり、しばらく悲惨な状態が続きます」 (参考記事:「猛毒の“ネコ毛虫”、米国で大発生か」)
一方、サシハリアリの場合、腫れ上がることはなく、刺されたあとすらあまり残らないのだそうだ。
「失望しますね。痛みで泣き叫んでいるというのに、人に見せたい大きな赤いあとが出ないのですから」とシュミット氏は話す。「サシハリアリは、私の満足感まで奪い去ってしまいます」
シュミット氏もスミス氏も幾度となく痛みに耐えてきたが、それでも学ぶ価値はあると口をそろえる。「私は夢を生きています」とスミス氏は言う。「ハチと仕事をしているのですから」
スミス氏は痛みの研究以降、ハチの巣の内部構造に関するこれまでで最も網羅的な研究の一つを終えた。コロニーの誕生から死まで一部始終を測定する研究だ。そして現在、ハチの「思春期」を引き起こす誘因を解明しようとしている。ハチだけでなく、ほとんどの動物に何らかの思春期があるのだ。
筆者はシュミット氏に、刺す虫から学んだ最もクールなことを質問してみた。「不思議なことを学びました」。シュミット氏は、こう前置きすると、「刺す虫と人の関係は、実際、私たち人の問題だということです。心理戦では、勝者は彼らです。刺す前に、彼らは私たちを怖がらせることに成功していますからね」
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