ツイードの物語、伝統の生地はこうしてスコットランドの誇りになった

19世紀の英国王室が人気に火を付けた

2021.01.25
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1955年、足踏み式の織機でハリスツイードを織る、英国スコットランド、アウターヘブリディーズ諸島の職人。こうした離島で、何世紀にもわたる織物の伝統が受け継がれている。 (PHOTOGRAPH BY BERT HARDY, PICTURE POST/HULTON ARCHIVE/GETTY IMAGES)

 80年間使われている織機に身をかがめ、27歳のミリアム・ハミルトン氏はカチカチと音を鳴らし、毛糸からツイード生地を織っていく。ここは英国スコットランドの西端、アウターヘブリディーズ諸島のルイス島。湖畔の工房で、彼女は何世紀にもわたって受け継がれてきた伝統を担っている。ただし彼女の作る美しい生地は、昔ながらのハンティングジャケットやシャーロック・ホームズの帽子に使われるのではなく、鮮やかな色の男性用ベストや小洒落たランプシェードになる。

「自然の中にあるパターンをツイードにしたいのです」と、クロスボストの町にある「ザ・ウィービング・シェッド」で仕事をするハミルトン氏は言う。彼女は2018年に90歳の職人から織り方を学んだが、生地には彼女自身のセンスが吹き込まれている。「それは湖の色かもしれないし、アザミの花のグラデーションかもしれません」と彼女は言う。「この環境の中にあるドラマを反映しているのです」

 丈夫で耐久性に優れるツイードは、かつての素朴な生活を彷彿とさせる。その歴史には英国王室も登場すれば、この島の農業生活も登場する。一方で、現在のツイードは、地方の手工業コミュニティーと都会のデザイナー、昔ながらの技術と最新技術とが幸福なマリアージュを見せてくれようとしている。ツイードの歴史、そしてこれからを見てみよう。

ツイードはどのようにして誕生したのか

 ツイードの歴史は、一つの町や工場のものではない。毛織物は、スコットランドの日常の一部であり、農民から猟場の管理人、アスリートまで広く身に着けられてきた。スコットランドの由緒あるクラン(氏族)がタータン織物やフェアアイルのセーターを着用したのと同様に、ツイードはこの土地柄を映し、国家の誇りとなり、寒さの中で着込むのにぴったりの衣服として利用されてきた。

「想像を絶する寒さと雨の中、丘を這うようにして歩くという生活に起源があります」。そう語るのは、スコットランド南部、スコティッシュボーダーズ地方にある町ホーイックで1882年からツイードを生産しているロバット・ミル社の代表取締役、スティーブン・レンドル氏だ。

 ツイードとは簡単に言えば、地元の丈夫な羊から採取したウールを染め、紡ぎ、織って作られた、繊細な模様の入った生地のことである。スコットランドでは18世紀初頭から、大型の織機と地元の地衣類や野草で染めた糸を用いて生産されてきた。

【動画】ツイードはいかにして地域の伝統を守っているか
スコットランドのアウターヘブリディーズ諸島では、何世代にもわたって島民がハリスツイードの伝統を共有してきた。映画製作者のジャック・フリン氏とニック・デイビッド氏が、このユニークで持続可能な産業に関わる人々の物語を紹介する。(解説は英語です)

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