ダイアウルフ(Canis dirus)は、今からおよそ1万3000年前に絶滅したイヌ科の動物。体重は約70キロと、現在のタイリクオオカミ(Canis lupus)より大きく、南北アメリカ大陸の広い範囲に生息し、氷河期のウマや巨大ナマケモノなど絶滅した動物たちを捕食していた。
しかし、謎は数多く残っている。ダイアウルフはどこから来たのか? 現代のオオカミとどれくらい似ていたのか? 何十万年も生き延びた末に絶滅したのはなぜか?
このほどダイアウルフの複数の個体のゲノム(全遺伝情報)が初めて解析され、驚きの事実がいくつか判明した。まず、ダイアウルフはタイリクオオカミに近い仲間と考えられてきたが、進化上は遠い関係にあり、アメリカ大陸で長く孤立していたことがわかった。
「ダイアウルフとタイリクオオカミは形態学的に非常によく似ていますが、遺伝的には全くもって近い関係ではありません」と英ダラム大学の考古学者アンジェラ・ペリー氏は説明する。氏らの論文は1月13日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された。
この研究によって他のイヌ科動物との関係が明らかになり、ダイアウルフは約570万年前にタイリクオオカミの祖先から枝分かれした「新世界」の系統であることが判明した。その結果、ダイアウルフの進化と絶滅の謎はさらに深まった。
「新たな疑問が生まれます。彼らの絶滅は、気候や環境の変化と関係しているのでしょうか。それともヒトや、他のオオカミやイヌ(あるいは病気)が到来し、彼らを絶滅に追いやったのでしょうか」とペリー氏は話す。