4.5万年前のイノシシの洞窟壁画、最古の動物画を発見

インドネシアで続々と見つかる洞窟壁画、アートの起源の解明に光

2021.01.15
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驚くほど大きくなったイノシシの壁画。太古の画家が狩りの最高の獲物を描いたのかもしれない。(MAXIME AUBERT)
驚くほど大きくなったイノシシの壁画。太古の画家が狩りの最高の獲物を描いたのかもしれない。(MAXIME AUBERT)
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 約4万5500年前、インドネシアのスラウェシ島で、古代人が洞窟に足を踏み入れて丸々と太ったイノシシを描き、剛毛が生えた背中や顔のいぼまで表現した。この太ったイノシシの絵が、これまでに発見されたなかで最古の動物画だとする論文が1月13日付けで学術誌「Science Advances」に発表された。

 壁画には、1頭のイノシシが、争っている別の2頭のイノシシを見ているような場面が描かれている。また、イノシシの尻近くには人間の手形が2つ描かれている。壁画のほぼ中央にも剛毛の一部が見えるので、4頭目も描かれていたのかもしれない。

 洞窟内部の壁に顔料のレッドオーカーで描かれたこの壁画は、2017年12月、地元の考古学者、バスラン・ブーハン氏が発見したものだ。バスラン氏は、現在、オーストラリアのグリフィス大学の博士課程で学んでいる。氏は、古代人の活動の痕跡を求めて少人数のグループでスラウェシ島南部の洞窟を捜索中、リアン・テドンゲという場所でこのイノシシ壁画を発見した。

 今回の論文の筆頭著者でグリフィス大学の考古学者、アダム・ブラム氏によれば、このイノシシ壁画は、狩りの成功の記念として描かれた可能性があるという。

「実際はかなり小さなイノシシなのですが、古代人は、とても太った姿を描いています。おそらく、できるだけ太った大きなイノシシを仕留めたいという人々の思いがあったのでしょう。大量の肉とタンパク質が手に入りますから」とブルム氏は言う。

壁画には、複数のイノシシがからみ合う場面が描かれているようだ。残念ながら腐食して、2頭(あるいは3頭)のイノシシの姿はほとんど失われているため、どのような壁画であったかを完全に解明することはできない。左のイノシシの絵の大きさは横136cm、縦54cm。(AA OKTAVIANA)
壁画には、複数のイノシシがからみ合う場面が描かれているようだ。残念ながら腐食して、2頭(あるいは3頭)のイノシシの姿はほとんど失われているため、どのような壁画であったかを完全に解明することはできない。左のイノシシの絵の大きさは横136cm、縦54cm。(AA OKTAVIANA)
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 この壁画は具象画としても世界最古だが、必ずしも世界最古のアートというわけではない。「それは『アート』の定義によりけりです」と、論文の共著者でグリフィス大学の考古学者、マキシム・オーベール氏は話している。

 驚くほどの太古から創造性が芽生えていた痕跡が、近年、複数確認されている。南アフリカでは、7万3000年前のハッシュタグ(#)に似た落書きが発見された。これを確認されている世界最古の絵画とする見方もある。(参考記事:「世界最古の絵画? 7万3000年前の石に描かれた模様」

 とはいえ、今回の壁画は、インドネシア各地で発見された洞窟壁画の価値をさらに高めることになった。この国では、スラウェシ島だけでも、この70年間におよそ300の洞窟で壁画が確認されている。その中には、2番目に古い具象的な洞窟壁画も含まれている。4万4000年以上前に描かれたこの壁画は、5~10センチほどの小さな人間らしき姿がイノシシや小型の水牛の仲間を追う場面が描かれ、太古の狩りのスリルがいきいきと表現されている。(参考記事:「4.4万年前の洞窟壁画を発見、最古の狩猟シーン」

次ページ:覆る「ヨーロッパ中心の世界観」

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