抗原検査の使い方は変わる?

 新型コロナウイルスの変異株のなかでも、特にオミクロン株は口腔内に多く存在することが初期の証拠から明らかになっている。

 南アフリカの研究者らが2021年12月24日付けで「medRxiv」に投稿した査読前の論文によれば、入院するほどではないが新型コロナの症状がある382人にPCR検査を実施したところ、デルタ株の場合は鼻腔ぬぐい液を検査する方が正確な結果が出たが、オミクロン株の場合は唾液検査の方が正確だった。

 鼻腔ぬぐい液を用いる迅速抗原検査では、オミクロン株の感染を特定するのに特に時間がかかる可能性があることは、他の複数の研究でも示唆されている。1月5日付けで「medRxiv」に投稿された査読前の論文では、米国で12月上旬に新型コロナ検査を受けて陽性になった30人の検体を調べている。その結果、オミクロン株の感染例のほとんどが、PCR検査で陽性になってから数日後にようやく迅速検査で陽性となっていた。

 つまり、まだ感染力が残る初期に、迅速抗原検査ではオミクロン株の感染を検出できない可能性がある。

 こうした結果は、人々がソーシャルメディア上で報告していることと同じだと、論文の著者の一人である米エール大学公衆衛生大学院の医学微生物学者アン・ワイリー氏は言う。

 オミクロン株が唾液中に多く存在していることを示す証拠が増えつつあることを受け、ソーシャルメディア上では、家庭用抗原検査キットで鼻腔ではなく咽頭をぬぐうことを勧める一般人や研究者が大勢いる。

「米食品医薬品局(FDA)が承認した使用法ではないので、これについての発言は非常に難しいところです」とワイリー氏は言う。他にも多くの専門家が、本来の使用法とは異なる使い方の推奨をためらっている理由はそこにある。

 いずれは咽頭ぬぐい液での検査も可能になるかもしれないが、現行の迅速検査は咽頭ではなく鼻腔用に設計されていると、米ベイラー医科大学の感染症専門医ジル・ウェザーヘッド氏はくぎを刺す。

「さらなる試験によって有効性が確認されるまでは、設計された通りの使用法で検査を行うことをお勧めします」とウェザーヘッド氏は言う。

表面の消毒や人との距離などの対策はまだ必要?

 これまでの変異株と同様、オミクロン株は主に空気中の飛沫を介して感染する。物体の表面を消毒することは、おそらく労力に見合うほどの効果はないというのが専門家の意見だ。「ものの表面から感染する可能性は低いので、表面の消毒に時間、エネルギー、お金、資源、心の健康を費やすよりは、手洗い、ソーシャルディスタンスの保持、マスクの着用に向ける方がよいでしょう」とワイリー氏は話す。

 また、ソーシャルディスタンスに関する「6フィート(約1.8メートル)ルール」は、それだけ離れれば感染しないという意味ではなく、感染者に近づくと感染リスクが高まることに対する注意喚起だと、米スタンフォード大学の感染症専門医アブラール・カラン氏は言う。

「1.8メートル以上離れていても感染することはあります。けれども、距離が遠くなればエアロゾル(空気中の微粒子)が希釈されるため、感染の可能性は低くなります」。感染リスクは、換気や、周囲の人が着用しているマスクの種類といった要因によっても変わってくる。

オミクロン株でも後遺症が残るおそれはある?

 まだわからない。オミクロン株が長期的に持続する症状を引き起こすかどうかが明らかになるのは数カ月後になるだろう。しかし、ワイリー氏をはじめとする一部の専門家は、オミクロン株が肺に感染しにくい傾向があるうえ、ワクチン接種を受けた人が増えていることで感染や発症のリスクが下がっているため、新型コロナ後遺症に苦しむ人は少なくなるのではないかと考えている。

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