年齢や基礎疾患、ワクチンによる差は?

 先に紹介したケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究によると、65歳以上の高齢者やワクチン接種を受けられない年齢の子どもを含め、すべての年齢層でオミクロン株はデルタ株に比べて重症化しにくいようだ。それでも、他の健康問題と同様、年齢が重症化の要因の1つであることに変わりはないとデル・リオ氏は言う。「どんな病気でも、高齢になるほど悪化しやすくなります」

 基礎疾患のある人や免疫力が低下している人も、ワクチン未接種の人と同様に感染しやすい。現行のワクチンがオミクロン株による症状を防ぐ効果は、デルタ株に比べて低い。だが英HSAの報告によれば、ブースター接種(追加接種)を終えた人は、未接種の人に比べてオミクロン株感染による入院率が88%も低いことがわかっている。英国各地の病院からの報告では、現在、集中治療室に入っている人の大半がワクチン未接種の人だという。

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は1月6日の記者会見で、オミクロン株に感染すれば、年齢や健康状態に関係なく、たとえ病院に行くほどではないにせよ苦しい思いをする点や、オミクロン株でも入院や死亡する人はやはり多い点を強調した。

感染しやすいのに重症化しにくいのはなぜ?

 デンマークで行われた家庭内感染の研究によると、オミクロン株はデルタ株の2〜4倍うつりやすいという。なお、論文はまだ査読を受けておらず、2021年12月27日付けで「medRxiv」で公開された。また、ワクチン接種による抗体を逃れやすく、ブレイクスルー感染を引き起こしやすい。その結果、体調不良で来院する人も、病欠の連絡をしてくる病院スタッフも増えているとデル・リオ氏は言う。

 オミクロン株のスパイクたんぱく質(新型コロナウイルスがヒトの細胞に結合する部分)には36カ所の変異がある。これらの変異が細胞への侵入と複製のしかたをどのように変えているのかは、マウスやハムスターなど小型の実験動物や培養細胞を用いた研究によって解明され始めており、論文はいずれも査読前だが少なくとも6本あると、米ワイル・コーネル医科大学のワクチン研究者でウイルス学者のジョン・ムーア氏は説明する。

 これまでの変異株とは違い、オミクロン株は肺の細胞に効率よく感染できないらしく、その結果、体へのダメージが少なく、症状も重くなりにくい。オミクロン株に感染したげっ歯類では肺のウイルス量が著しく少ないことが、いくつかの研究からわかっている。一方で、鼻や副鼻腔を含む上気道では、オミクロン株はデルタ株の100倍以上の速さで複製されることが、1月3日付けで「bioRxiv」に発表された査読前の論文で示唆された。

 上気道に感染しやすく、免疫をより回避し、感染力が強いといったオミクロン株が遂げた変化は、感染した相手を重症化させることなく自分の複製を広げるように進化することで、ウイルスがみずからの未来を確かなものにしようとしている兆候だ。

「ウイルスにとっては、自分の複製を作って次の宿主に感染できさえすれば、感染した相手が生きようが死のうが、どうでもいいのです」とムーア氏は言う。「自分のゲノムを複製することがすべてなのです」

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