1月6日、トランプ支持者が米議会議事堂の前に組み立てた絞首台。暴力と白人至上主義のシンボルのなかには、誰が見てもそうとわかるものもあれば、一般の人には意味が通じないものもある。(PHOTOGRAPH BY SHAY HORSE, NURPHOTO/GETTY IMAGES)

 2021年1月6日、米連邦議会議事堂へ乱入した暴徒たちは、さまざまなシンボルを携えていた。

 その中には、テレビでこの異様な光景を見ていた人々にも一目で意味がわかるシンボルもあった。赤地に青いX印、その中に白い星が並ぶ旗は、南北戦争時代に奴隷制維持を支持して合衆国からの独立を図った南部連合の旗で、今も奴隷制や白人至上主義の象徴になっている。絞首台と首のしめ縄も同様に、人種隔離政策であるジム・クロウ法時代の黒人リンチや、西部開拓時代の無法地帯を思い起こさせる。(参考記事:「リンチ殺人が横行した米国、暗黒の歴史」

 だがその他にも、議事堂の建物を破壊し、死者まで出した騒乱のなかには、トランプ大統領支持者や陰謀論信者、白人至上主義者の間でしか通じない多くのシンボルが飛び交っていた。旗に描かれていようと、暴徒の腕に刺青されていようと、これらのシンボルに共通しているのは、キリスト教徒の白人男性を中心とする理想化された歴史に立ち返れというメッセージだ。

 毛皮のローブに角が生えたかぶり物を着けた自称、陰謀論「Qアノンのシャーマン」は、おそらくこの日最も多く写真に撮られた暴徒ではないだろうか。何も着ていない上半身は、男の主義主張を表すシンボルで埋め尽くされていた。

 左胸には生命の樹「ユグドラシル」の下手な刺青、腹部には北欧神話の神トールの槌ミョルニル、心臓の位置にはバイキングのシンボル「バルクナット(殺された者たちの結び目という意味)」が描かれていた。いずれも、古代スカンディナビア人の図像を19世紀ヨーロッパの国粋主義者や20世紀のナチスが復活させ、歪曲して自分たちのシンボルとして使い出したものだ。こうした文化の盗用に、現代の非キリスト教徒の立場からは怒りの声が上がっている。

「Qアノンのシャーマン」を自称するジェイク・アンジェリ容疑者の上半身は、白人至上主義者に盗用された古代スカンディナビアとバイキングのシンボルで覆われていた。(PHOTOGRAPH BY SELCUK ACAR, NURPHOTO/GETTY IMAGES)

 米バージニア工科大学の宗教文化学部長マシュー・ガブリエル氏は、バイキングや十字軍の図像を極右主義者が採用するのは、「二重の郷愁」の表れであると語る。「1000年前も昔の中世の時代への郷愁と、近代になって興った白人至上主義運動への郷愁です」

 ほとんどが白人男性で占められていた乱入者たちの目には、バイキングの「戦う男らしさ」が魅力的に映るのだと、ガブリエル氏は言う。「少なくとも彼らの頭の中では、これらのシンボルが勇敢な戦士の象徴として刷り込まれてしまっているのは確かです」

「誰も、バイキングのような生活に戻ろうと思っているわけではありません。ただ、そういったイメージが欲しいだけです」

 南軍旗以外にも、議会で暴徒たちが掲げていた旗のなかには同様の意味を含むガズデン旗があった。ガラガラヘビの下に「Don’t Tread On Me(私を踏みつけるな)」と書かれたこの旗は、元々独立戦争時に英国に対抗する植民地軍の旗としてデザインされ、2000年代に共和党の超保守派によるティーパーティ運動で採用された。(参考記事:「米議会乱入事件、現場にいた記者は何を見た?」

 一方で、ほとんどの米国人が教科書の中でしか見たことのない旗に暴徒たちが手を加え、盗用した例もある。切り刻まれた蛇が描かれた旗は、「Join, or Die(団結か死か)」旗と呼ばれ、合衆国建国の父のひとりであるベンジャミン・フランクリンがデザインしたものだ。

次ページ:独立戦争時代の旗を持ち出す意図は

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