ヘビのポールダンス
サビッジ氏とサイバート氏は、2016年にヘビが体を輪にして円柱を登る動画を確認したあと、米シンシナティ大学の生物学者ブルース・ジェイン氏に連絡した。40年のキャリアを持つ同氏に、このような動作を見たことがあるかを確認するためだった。研究の共著者でもあるジェイン氏は、「仰天すると同時に、当惑しました」と言う。
しかし、撮影されていたのはタイムラプス動画だったので、ヘビがどのようにして円柱を登っているかを詳しく調べる必要があった。そこでザイバート氏は、2019年にグアムに戻って新たな実験を行った。高さ1.5メートルの壁に囲まれた狭い場所にスチール製の円柱を立て、その上にエサとなる死んだネズミを置いた。そこに15匹の野生のミナミオオガシラを放したところ、そのうち5匹がパイプを登った。その様子を高画質で撮影した。
動画を見たジェイン氏は、ヘビが柱を1周してつかまっている「グリップ領域」が1カ所であることに気づいた。通常、樹上性のヘビが木を登るとき、2カ所のグリップ領域(体を2周させる)が必要になる。下のグリップ領域を固定し、体を伸ばして上方の幹をグリップした後、下のグリップを解いて体を引き上げる。アコーディオン式と呼ばれる運動だ。
しかし、新たに発見された投げ縄式運動では、投げ縄のように円柱に1周だけ体を巻き付ける形になる。これを支えとして、波のように小さく体をくねらせ、ゆっくりと上に向かって進む。
だが、ジェイン氏によると、この動きはたやすいことではない。「実際、滑り落ちることもよくありました。そのため、上に向かって進めるとはいえ、ヘビにとってはかなり大変なことのようです」
学ぶべきことはまだたくさんある
今回見つかった移動手法は、ミナミオオガシラがグアム島で人工の柱を登る場合にしか観察されていない。そのため、論文には、ミナミオオガシラの元々の生息地やそれ以外の種でも同じような運動が見られるかどうかはわからないと断っている。
とはいえ、この独特な移動手法は、ミナミオオガシラがグアムの生態系に大きな被害を与える一助になっているかもしれない。「このヘビにはたくさんの特徴があり、それが勢力拡大に貢献してきたのです」と サビッジ氏は言う。たとえば、雑食であることや、体を伸ばして枝から枝へと移動する能力などだ。
今回の発見は、新たな実験につながるとサビッジ氏は言う。ヘビが登りにくくなるように角度をつけた障害物を使うことで、ミナミオオガシラから巣箱を守れるかを研究するという。
ルアン氏は、ミナミオオガシラはかなり詳しく研究されているにもかかわらず、今回の研究で撮影されるまで、この移動法は明らかにならなかった点を指摘する。「よく知られた種であっても、まだまだ学ぶべきことがあるということを示しています」
おすすめ関連書籍
絶滅から動物を守る撮影プロジェクト
今まさに、地球から消えた動物がいるかもしれない。「フォト・アーク」シリーズ第3弾写真集。 〔日本版25周年記念出版〕 〔全国学校図書館協議会選定図書〕
定価:本体3,600円+税