眠たがりのヤマネ、寝心地のよい木の洞を奪われる

ヨーロッパですみかの森が減っている、巣箱プロジェクトは成功するか

2021.01.06
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オオヤマネはヨーロッパ全体に広く分布している。古代ローマ人にとって、この動物はごちそうだった。(Photograph by Klaus Echle, Nature Picture Library)
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『不思議の国のアリス』に登場する「眠りネズミ」は、帽子屋のお茶会の間ずっとうつらうつらしていて、たまに目を覚ますと寝言のようなばかげたことを言う。

 実際にこの描写は正しい。眠りネズミは、英語で「the Dormouse」と書かれ、ヤマネという動物を指している。ヨーロッパからアジア、アフリカまで28種が生息するげっ歯類だ。なんとこのヤマネ、ほとんどの時間を寝て過ごし、一説にはいびきまでかくという。

「本当に怠惰な動物なのです」と、リトアニアのネリス地域公園の上級生態学者、タダス・ブジャナウスカス氏は話す。同公園は、「食用ヤマネ」とも呼ばれるオオヤマネのすみかになっている。食用と呼ばれるのは、古代ローマ人が、冬眠に入る前のまるまると太ったヤマネを焼いてハチミツにつけたものを食べていたからだ。

 ヤマネ科の中で最も大きなオオヤマネ(といっても体長15センチほど)は、1年のうち11カ月を寝て過ごしたという報告もある。これは知られている限り、地球上で最も長い冬眠期間だ。「眠るのが大好きな人は、ヤマネに生まれ変わるとよいかもしれません」とブジャナウスカス氏は冗談を言う。

 しかし、この生活スタイルにはマイナス面もある。ヤマネは古い木の洞を巣にすることを好むが、ポーランド、ベラルーシ、ラトビア、リトアニアなどの国では、数百年にわたる森林伐採によって多くの木が失われている。

【動画】わが家が一番
リトアニアのネリス地域公園で、巣箱を開けてオオヤマネを観察する研究員。

 オオヤマネは、これらすべての国で絶滅危惧種に指定されている。リトアニアでは分布域がたった10個の小さな生息地にまで減少しており、そのほぼすべてが保護林の中にある。森林を保存し成長させることが、この種を保護する一番の方法だろうが、それには数十年か数百年かかるだろう。

 ヤマネに当座のすみかを与えるため、巣箱を設置する活動が行われているとブジャナウスカス氏は語る。リトアニアと英国でそれぞれ行われた調査では、ヤマネが巣箱を使っているだけでなく、それが個体数の増加に寄与しているらしいことが明らかになっている。

「ヤマネと森林のつながりを維持していかなければなりません」と氏は言う。「いちど手放したら、取り戻すことは困難ですから」

それを造れば、彼らはやってくる

 ネリス地域公園では、ヤマネの巣箱設置・保護計画が、2005年に開始された。ドイツのボンに拠点を置く非営利団体、森林管理協議会(FSC)による持続可能な森林管理認証の一環だ。これまで公園の職員によって、公園内のうっそうとしたカシの原生林に250個の巣箱が設置されている。

 ヤマネの巣箱は鳥の巣箱と似ており、入り口にはフクロウなどの捕食動物が攻撃できない程度の穴が開けられる。なにしろ巣箱の良いところは、本来は身を隠している動物に科学者らの目が届くようになることだ。

次ページ:巣箱の利点

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