女性の健康を取り巻く問題は、男性のように関心をもってはもらえない。研究も十分ではなく、二の次になっている。ILLUSTRATION BY BIANCA BAGNARELLI
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 今の医療制度、治療法、研究や支援などは、人口の半分を占める女性たちが使うには、あまりに穴だらけだ。でも楽観的に考えれば、これから新たな発見があり、前進することで、その未来はもっと明るくなるはず。女性たちは声を出してもっと語るべきだ。

 男性が支配してきた医学の世界では、治験も主に男性が対象だった。あくまでも男性が「基準」であり、新薬の効果も男性だけ調べれば事足りるとされてきたのだ。妊娠・出産が可能な年代の女性は「安全面の理由」で、それ以外の女性もホルモンの男女差を関連要因から除外するために、対象から外された。

 1993年、米国立衛生研究所は女性の被験者をもっと増やすよう求めたが、2016年に医学誌が行った分析では、確かに女性の割合は増加していたものの、人口比を必ずしも正確に反映しているわけではなかった。調べを進めるなかで、医薬品の安全性や有効性を男女別に分析することすら行われていないこともわかってきた。

足りていない女性被験者

 男女の生物学的な相違や医療効果の差まで把握するには、女性のみを対象にした研究が必要になる。女性は男性より慢性疾患や免疫疾患を抱えている人が多く、また、そうした診断が下りやすい。

 米国では、一つ以上の慢性疾患にかかっている女性の割合は38%で、男性は30%だ。冠動脈疾患の場合、死亡率は女性の方が高く、後遺症も深刻だ(研究予算は男性対象の方がはるかに多いのだが)。女性向けとうたって発売される医薬品が、かえって女性の害になっていることもある。こうした現状を見ると、女性が被験者になり、意思決定もできる研究や治験がまだ足りていないことがわかる。

 2015年、国連は2030年までに、世界のすべての子どもと成人男女が基本的な医療を受けられるようにする、という目標を掲げた。しかし現在、世界で医療を受けられない人は何億人もいて、目標の達成にはまだ時間がかかりそうだ。

 それでも努力する価値はある。健康で幸福な生活のために、女性自身とその家族、社会、さらには国が何を必要としているのか。それを私たち一人ひとりが代弁することを始めなくてはならない。

※ナショナル ジオグラフィック1月号「女性たちの健康はなぜ後回しにされる?」では、男性ほどには関心をもってもらえない女性の健康を取り巻く問題について、一人の女性医師が訴えます。

文= ゾアンヌ・クラック/医師・脚本家